2024年11月 / 今月のチェックマーク作品リスト

年末年始〜の忙しさで更新遅れております。すみません。

その月にリリースされたもので、チェックマークを是非とも付けておきたい作品(アルバム・EP・ミックステープなど)をピックアップする記事です。

ということで、11月は以下のラインナップとなっております〜。

Jacquees – 『Baby Making』


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11/1リリース。ジョージア州アトランタ出身のR&BシンガーソングライターJacquees(ジャックイース)の4枚目のスタジオアルバム。彼自身が新しく父親となったことに触発されたというアルバムで、スロージャムをメインに、透き通ったJacqueesの歌声が楽しめる作品です。

「自分が父親になったことが一番大きいね。本気で向き合わなきゃいけない時期に入ったって感じかな。自分が父親になることで、その気持ちや経験が自然と音楽に反映されてるんだ。昔からセクシーな曲を作るのは好きだったけど、愛の歌とはまた別物だったんだよね。そこが今作では一つにまとまった感じがするんだ。このアルバムは“愛を育む”とか“新しい命を生む”っていうテーマがしっかり込められてるんだよ。ただ、みんなに言いたいのは、まだ若い人たちは“親になる”ってことを軽く考えちゃいけないってこと。逆に、年を重ねた大人でも、もし責任を持つ覚悟がないとか、相手を本当に愛してないなら、子どもを作るべきじゃないと思うんだよね。子どもって、愛し合って生まれるべき存在なんだ。それができれば、きっと世の中ももっと良くなると思うよ。」Rated R&B

「ベイビーメイキング」というアルバムタイトルの通り、カップルの愛を育むための作品とも言えそうです。ベッドルーム音楽に、ドライブデートにいかがでしょうか。

Denise Julia – 『Sweet Nothings (Chapter 2)』


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11/8リリース。フィリピン出身のR&Bシンガーソングライター、Denise Julia(デニース・ジュリア)の新作EP。クラシックなR&Bを感じさせる9曲で構成されていて、コーチェラの出演でも話題になった、フィリピン系アメリカ人アーティストthuyや、「フィリピンR&Bのキング」とも言われているJay Rとのコラボソングもあり。

本作は「Chapter 2」ということで、2023年の前作のテーマが活きているといいます。さらに、前作よりパーソナルな部分に踏み込み、リアルが故の切なさや自己発見を描いているそうです。

「今回はストーリーがもっとリアルだし、プロダクションもすごくリッチで新しいテクスチャーが入ってるの。全体的に、もっと親密な感じがするわ。」Vic Vic Bautista

「今年の初めにカミングアウトしてから、自分自身をもっとさらけ出す感じになったし、書いていることも前より少し大胆で自由になった気がする。言いたいことを抑えずに、そのまま書いてるの。」Vic Vic Bautista

「Sweet Nothings」というフレーズは、英語のスラングや日常会話でよく使われる表現だそうで、「愛のささやき」や「甘い囁き」といった意味を持っているのだとか。

ロマンチックな文脈で使うと、恋人が耳元で囁く「愛してるよ」「君だけだよ」といった甘い言葉。一方で、皮肉として使われる場合もあり、「甘い言葉だけど、実際には何も本質がない」といったニュアンスを持つこともあるそうです。

アートワーク含め、一見軽やかでスイートな雰囲気を持つこの作品(Sweet Nothings)ですが、実際には表面的な甘さだけではない、「深いもの」を伝えようとしているのがわかります。

Mary J. Blige – 『Gratitude』


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11/14リリース。ブロンクス出身の「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」Mary J. Blige(メアリー・J. ブライジ)の最新アルバムであり、「たぶん最後のアルバムになると思う」と、インタビューでもほのめかしていた作品。

ヒップホップ的なビートやサンプリングなど、原点回帰を感じさせる作風と、「Gratitude(感謝)」というタイトルからも、彼女のキャリアの節目を感じます。

そんな印象を最初に受けた一方で、1994年の過去作『My Life』と比べると、『My Life』が暗く厳しい時期を反映しているのに対し、本作は自己受容や強さをテーマにしていると彼女は説明しています。(「正直比べられない」とも言っていますが)

「My Lifeの頃のメアリーはとても暗かった。自分のことが大嫌いで、不安定で、正直死にたいって思ってたし、自分自身を大事に扱えなかった。で、その頃の私は、なんかこう、悪いものばっかり引き寄せてた感じ。だけど、この新しいアルバムは、それを乗り越えられるって証拠なの。強い女性になれるし、自分を愛することができるし、愛し方だって学べるってことを伝えてる。」Tamron Hall Show

「でさ、もう誰かに愛してもらおうって、必死になる必要なんてないのよ。それがMy Lifeの時だったのよね。あの頃の私は、みんなに『お願いだから私を愛して、私を捨てないで』って泣きついてた。もちろんあの曲たちは大好きよ。けどね、本当に心が痛むのよ。でも今は違う、今はハッピーな日々だし、これはハッピーな作品なのよ。」Tamron Hall Show

長いキャリアや、彼女が積み上げてきたものの重みは言うまでもありませんが、だからこそ説得力があるし、音楽にも大きなパワーを感じました。

「自分を愛することができるし、愛し方だって学べるってことを伝えてる」なんて、そんな深い思いが込められてると思っただけで、このアルバムを聴く理由が十分すぎるくらいにある気がします。ここで語るにはもったいないほど、この一枚には優しさと強さがぎゅっと詰まっているのだと思います。

Nefertitti Avani – 『Odyssey』


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11/15リリース。オハイオ州クリーブランド出身のR&BシンガーNefertitti Avani(ネフェルティティ・アヴァニ)と、フィンランドのプロデューサー、Misha(ミーシャ)、フランスのプロデューサー、Evil Needle(イーヴィル・ニードル)によるコラボレーションEPです。

当ブログでも紹介したことのあるMishaと、個人的に昔から知っているし好きなプロデューサーEvil Needleのコラボなんて夢のようだし、プロダクションがとにかく良い。スローリーでメロディアスで、ほのかなローファイ感がたまらない。

Nefertitti Avaniのボーカルも相性バッチリで、ソウルフルR&Bの2024年ベストと言っても過言ではない、おすすめ作品です。

Cordae – 『The Crossroads』


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11/15リリース。メリーランド州スートランド出身のラッパーCordae(コーデー)の3作目のスタジオアルバムです。

「選択」が人生を大きく左右するように感じた時期があったことで「The Crossroads(岐路)」というタイトルが名付けられたという本作。一つの決断がすべてを決めるわけではなく、複数の選択が積み重なって人生が形成されることを理解するようになったと語っています。

「それは、当時の俺が人生のいろんな場面で岐路に立たされてる感じがしたからなんだ。まるで生きるか死ぬかみたいなね。本当に、次の選択が右に行けば全部完璧で『イェイ!人生最高!』って感じだけど、左に行ったら『あぁ、人生最悪だ』ってなるような気がしてた。でも、最近気づいたんだ。一つの選択がそこまでの重みを持つわけじゃなくて、いろんな選択が積み重なって人生が形作られるんだって。それでも、当時は世界中で起きてるすべてのことと絡めて、まさに岐路に立ってる感じがしてたんだ。曲の中でもずっと『俺、今クロスロード(岐路)にいる』って言い続けてた。前のアルバムでも、DirkとH.E.R.と一緒にやった曲の中で『I’m Crossroads, been Crossroads(俺は岐路にいる、ずっと岐路にいる)』って歌ってたんだよね。だから、曲の中で何度もそう言ってて、『これだ、このタイトルしかない』って思ったんだ。」billboard

Cordae – Chronicles (feat. H.E.R. and Lil Durk)

また、Cordaeはこのアルバムを作るために、あえて2年以上の時間をかけたと語っています。ソングライティングのスキル、ラップのスキルの向上など、フロウやリリックのクオリティを以前より高める努力をしたそう。さらに、アルバム全体のサウンドやムードを決定するビートの選択は、さらに慎重を期し、自身の「味覚」を洗練させたのだとか。

「なんで時間をかけたかって?それは、今が準備万端だって思ったからだよ。俺、自分がアーティストとして今までで一番成長したって感じてるんだ。でも、そのためには時間が必要だった。人生をちゃんと生きて、考える時間が欲しかったんだ。特にこのアルバムでは、自分をもっと成長させる必要があったんだ。ソングライターとしても、ラッパーとしても。もっといいバースを書きたかったし、もっといい物語を伝えたかった。ビートの選び方とか、センスももっと磨きたかったしね。それには努力と時間が必要だろ?だからこそ、今のところ自分が出せるベストを詰め込んだアルバムになったと思ってる。」billboard

客演も豪華だし、彼が語るように気合いの入り方の違いを感じますね。

FLO – 『Access All Areas』


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11/15リリース。ロンドンを拠点に活動する3人組のR&BガールズグループFLO(フロー)の待望のデビューアルバム。「自分らしさ」を軸に、これまでよりも深く、人間味に溢れている様子がうかがえる作品です。

「このアルバムでは、とことん自分たちらしさを出したかったの。”強い女”でいることって、いつも防御壁を張ることじゃないってこと、みんなに知ってほしかった。脆さを見せることの大切さもね。このアルバムはまさに愛の結晶!これまでの曲も好きだけど、もっと深掘りした感じかな。感情的な部分とか、繊細な一面も見せたいんだ。」BRITISH VOGUE

別れを前向きにとらえて、「あなたが居なくなって良かった」という「Losing You」などがありましたが、確かに自己肯定や自立性をこれまで表に出していた印象です。

本当の強さがその奥にもあることや、弱音がある種の強さでもあることを学ばせてくれます。

Kendrick Lamar – 『GNX』


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11/22リリース。Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)がサプライズリリースした6作目のスタジオアルバムです。

アルバムタイトルの「GNX」は、ケンドリックが生まれた1987年に発売された車「ビュイック・グランドナショナル」の特別モデルを指しているそう。その時代を象徴する存在の車で、ケンドリックが育った環境や彼のルーツを象徴するアイテムとしてアルバムの名前に採用されたのだとか。

地元ロサンゼルスへの思いをより直接的に表現したという点で、ケンドリック・ラマーのルーツへの回帰を感じられます。これまでの作品が強い社会的メッセージや個人的な葛藤をテーマにしていたのに対し、本作はウェストコースト特有の音楽スタイルや、これまでの音楽のカルチャーを現代的に昇華させたサウンドが際立っています。

Amber Mark – 『Loosies』


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11月22日リリース。テネシー出身のシンガーソングライター、Amber Mark(アンバー・マーク)の最新作。本作は、次回アルバムの制作中に生まれた楽曲を集めたもので、ファンへの感謝の気持ちが込められているといいます。

Amber Markのハスキーで温かみのあるボーカルが、楽曲全体に心地よいグルーヴをもたらし、懐かしさを感じるファンクやレトロフューチャーなシンセポップの要素と調和。エモーショナルでありながら洗練されたサウンドデザインが印象的です。

Qendresa – 『Londra』


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11/28リリース。シンガー、ソングライター、プロデューサー、DJなどの肩書きで、ロンドンを拠点に活動するアーティスト
Qendresa(ケンドレサ)のプロジェクト。

自身の内面と向き合いながら作られた作品だそうで、彼女が生きてきたロンドンという都市の空気、過去の恋愛、そしてその中での成長が刻まれています。

「このアルバムが世に出たなんて、ちょっと現実味がない感じ。でも、すごく嬉しいわ。このプロジェクトでは、4曲のプロデュース を手がけて、すべての楽曲を自分で書いた の。ビートは、自分が成長し続ける中での実験 のようなものとして捉えていたわ。でも、作詞はいつも私の心と経験から生まれるもの。」Instagram

「今の個人的なお気に入りは「Sticky」私が書いた中で、最高のラブレターだと思う」Instagram

ヒップホップのノリも感じるソウルフル系のR&Bで、終始エモめな渋みのある作品です。また、声色の変化やボーカルミキシングの立体感にも魅力を感じました。

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