Summer Walkerの「Heart Of A Woman」を考察&解説 / 愛と失望、強さと弱さが交差するバラード
アトランタ出身のR&B歌姫、Summer Walker(サマー・ウォーカー)による、2018年の『Over It』、2021年の『Still Over It』に続く三部作の完結編アルバム『Finally Over It』のリードシングルとしてリリースされた一曲「Heart Of A Woman」。
女性としての「優しさ」や「強さ」を表向きには出しながらも、苦しみの中で揺れ動く感情や、弱音めいたものを強く感じる切なソングです。
今回はこの「Heart Of A Woman」を考察&解説していきたいと思います。
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Summer Walkerの「Heart Of A Woman」はどんな曲?
この曲は、愛と失望、強さと弱さが交差する複雑な人間関係をテーマにしたバラードです。
「女性としての優しさ(heart of a woman)」が関係を続けさせているけれど、それも限界に近いことや、自分自身を守ろうとする姿などがあり、歌い手の大きな感情の揺らぎが印象深いです。
愛において「許す」ことの偉大さを誇示しつつ、その結果として生まれた「自己犠牲」や「苦しみ」がリアルに描かれていて、恋愛における自己矛盾の痛みが絶妙に表現されています。
Summer Walkerの「Heart Of A Woman」を深読みする
ここからは「Heart Of A Woman」の歌詞の内容を、和訳を用いながら考察していきます。(繰り返しの部分は省略させていただきます。)
※ここでは直訳ではなく、独自の解釈や意訳を含む場合があります。本記事の解釈が正解と思わず、「考察」「感想文」程度にお読みくださいますようお願いします。
コーラス / 私の優しさがなければ、あなたは救われない
Only thing that’s saving you (Oh-oh)
Is the heart of a woman
Yeah
Only thing that’s saving you, oh
Is the heart of a woman
Hey, yeah
あなたを救ってるのは、私の女の情だけ
そうよ
あなたを救ってるのは、そう
私の女の情だけ
コーラスでは、歌い手が「私の優しさがなければ、あなたは救われないのよ」と歌っています。
彼女は関係を成り立たせているのが彼ではなく、自分の努力や愛情だと感じている一方で、限界が近いことを暗示。愛しているけれど疲れ始めている複雑な心情を表現しています。
「あなたがまだ私のもとにいられるのは、私が寛大だから」と、強気なメッセージ性を感じますが、女性特有の優しい側面や、深い愛情が故の弱音も同時に感じる部分です。
ヴァース 1 / 諦めたい気持ちと、愛してしまう矛盾
Question is, why I do the things I do?
Answer I may never find, but I’ll always choose you
Wanna give up on you but, damn, I know I can’t
I put the blame on me for giving you chance after chance
なんでこんなことしてるんだろうって、自分でも思うの
答えは見つからないけど、結局いつだってあなたを選んじゃう
もう諦めたいのに…あぁ、できないって分かってる
何度もチャンスをあげた自分が悪いって責めるのよ
最初のヴァースでは、歌い手が「どうして私はこんなことをしているの?」「どうしてあなたを選び続けてしまうの?」と自分自身に問いかけます。
自分でも理解できないほど相手を愛してしまっていて、彼を諦めたい気持ちと、結局は愛してしまう自分。その自己矛盾に、苛立ちや苦悩の感情が露わになっている様子です。
プレ・コーラス / 愛と失望の狭間で揺れる感情
In love with you, but can’t stand your ways
And I try to be strong
But how much can I take?
Put your words on your life this time
And I hope your ass ain’t lyin’ ‘cause
愛してるけど、あなたのやり方にはもううんざり
私は強くなろうと頑張ってるのよ
でも、私はどれだけ耐えられるだろう?
本気だってことを、命に誓って証明してよ
あなたが嘘をついてないといいけど、だって
プレ・コーラスでは、歌い手が「好きだけど耐えられない」と、愛と失望の狭間で揺れる感情を表現。彼を愛している一方で、その態度や行動に耐えきれず限界を感じています。
「Put your words on your life this time(今回は命を懸けてでもその言葉を守って)」というフレーズには、彼の誠実さを最後に試したい彼女の切実な願いが込められているように感じます。
彼を信じたい気持ちと、また裏切られるかもしれない不安が交錯する中、彼女は「これが最後のチャンス」と言わんばかりに決意と葛藤を表現、凝縮したパートです。
— コーラス繰り返し/省略 —
ヴァース 2 / 苦しくとも彼を許してしまう気持ち
It’s my mind and my soul versus your pride
Nigga, check your ego ‘cause I left mine at the door
Just because I let it slide
Drowning in all my emotions
I let you slide in this ocean I’m in
私の心と魂が、あなたのプライドとぶつかってる
ねえ、あなたのエゴを抑えてよ、私はもう自分のエゴなんて捨ててきたんだから
見逃してあげたからって、調子に乗らないで
自分の感情に溺れながらも、そんなあなたを受け入れてしまったのよ
2つ目のヴァースでは、歌い手が自分の心と魂を犠牲にしてまで彼に尽くしているのに対し、彼は自分のプライド(エゴ)を捨てられない状況を描いています。
彼女は「私はここまで譲歩しているのに、あなたはいつまで自分本位でいるの?」と問いかけ、彼の態度を改めるよう要求。また、彼を許し続けてきた過去を「Just because I let it slide(私が放っておいたから)」と歌い、彼への寛容な態度が結果として彼の傲慢さを助長してしまったことを後悔しています。
後半は、自分の感情に圧倒されている様子を「Drowning in all my emotions(自分の感情に溺れている)」と表現した後、「I let you slide in this ocean I’m in(私はあなたを、私がいるこの海の中に滑り込ませた)」と歌い、「自分が苦しい中でも彼を許してしまう」という愛と自己犠牲の矛盾を詩的に表現しています。
— プレ・コーラス繰り返し/省略 —
コーラス 2 / 女の情と失望と疲れ
Only thing that’s saving you (No, I can’t take it no more)
(I’m bound to walk out the door) Is the heart of a woman
Oh-oh, oh-oh
Oh-oh-oh-oh, oh-oh, oh
Only thing that’s saving you
Is the heart of a woman
Ah, ah
あなたを救ってるのは、私の女の情だけ
(もうこれ以上は耐えられないかも)
(ドアを開けて出て行っちゃうかもしれない)
それでも救ってるのは、私の女の情だけ
最後のコーラスでは、「No, I can’t take it no more(いや、もうこれ以上耐えられない)」、「I’m bound to walk out the door(私はきっとドアを出て行くことになる)」とも歌い、この関係の「失望」や「疲れ」の気持ちをさらに強めています。