Russの「No More」を考察&解説 / 背中の重荷と心の叫び

2023年8月18日にリリースされたニュージャージー生まれ、アトランタ育ちのラッパーRuss(ラス)のアルバム『SANTIAGO』に収録された「No More」の歌詞の内容を主に深掘りします。

(※本記事は筆者の感想文が含まれます。あくまで考察としてお読みいただければと思います。)

アルバムについて / 『SANTIAGO』の背後にある意味


Apple Music

このアルバムは、完璧であることや全員に愛されることへのプレッシャーを感じていたRussの深い繋がりと理解を求める願望を反映する作品だそう。

アルバム名は、Paul Coelhoの小説『The Alchemist』からインスパイアされいて「一人の人の旅が全ての人の旅である」という考えを表現しているそうです。

特に、アルバムの終わりにある「The Wind」は、自己の進化を象徴。Russは、この作品を通じて、リスナーに自己探求と成長の重要性を伝え、自分自身をより良い人間に進化させる可能性を示唆しているそうです。

小説『The Alchemist』

『The Alchemist』スペインのアンダルシア地方からエジプトのピラミッドを目指す羊飼いの主人公、サンチャゴの冒険小説。サンチャゴは夢を追い求める旅を通じて、人生の目的や自己発見、宿命についての哲学的なテーマについて考えるといった内容。

Russ-「No More」のリリックを深読み

ここからはリリックのいくつかを抜粋しながら、歌詞の内容を紐解いていきます。

この曲は、心の重荷や人生の困難に関するものを想起させます。Russがもうこれ以上耐えられないと感じ、過去のトラウマや失望、家族との関係の変化などに触れています。

歌詞の中心的なメッセージは、生活の重圧や痛み、信じていたものや人々に裏切られたという経験を通したもの。心の限界に達した感じが切ないサウンドで表現されています。

コーラス

Lyric

I don’t wanna cry no more (Yeah)
(もう泣きたくない)
Tired of hangin’ on, don’t wanna try no more
(掴み続けるのに疲れた、もう試す気がしない)
Too much weight up on my back, oh-oh
(背中にかかる重荷が重すぎる)
And I feel like I might snap, ah, ah-ah, ah-ah
(折れそうな気がする)

コーラスではタイトル「no more」の一文も見られる曲のハイライトとも言える部分。歌い手が「もうこれ以上泣きたくない」という強い感情を表現しており、背負っている重荷やその重圧が彼を限界に追い込んでいることが伝わります。

ヴァース1

Lyric

Think I’ve had enough of this game
(このゲームにはもううんざりだ)
Put a little too much trust in this game
(このゲームに少し信頼しすぎた)
I ain’t havin’ fun no more
(もう楽しくない)

「このゲーム」はおそらく「彼が直面している人生の困難や挑戦」だと考えられ、人生に対する失望感や虚無感が表現されています。

ヴァース1ではさらに「White flag in my hand, I’ma wave it high(手に白旗、高く振る)」と、明らかな「降伏」や「諦め」の意思を強い比喩で表現しています。

ヴァース2

Lyric

Family fell apart even though I got rich
(金持ちになっても家族はバラバラになった)
Tryna fight back, dad ain’t raise no bitch
(戦おうとしている、父は弱虫を育てていない)
Gave this shit my life and they tryna take it
(これに命をささげたのに、彼らがそれを奪おうとしている)
Back in one night well y’all can have it
(一晩で戻してもいい、君たちに譲るよ)
I don’t even want this shit no more (No more, no more, no more, no more)
(こんなものもういらない)

ヴァース2では「金持ちになったこと=成功」をコントラストに、家族がバラバラになったことなどに触れつつ、彼が以前に価値を置いていたものや状況に対しての興味喪失や飽き、疲れを感じていることを示しています。

「dad ain’t raise no bitch(父は弱虫を育てていない)」=「父親から強く育てられた」の部分からは、困難に立ち向かおうとする「抗い」の気持ちもうかがえるので、彼は執着することをやめ、新しい人生のステージや方向に進みたいと考えている様子も感じ取れます。

おわりに

非常に憂鬱な気持ちや、弱音を吐露している「No More」。冒頭のコーラスから「泣きたくない」「疲れた」と歌うのが衝撃的で、深い感情を伴うものだと思うので、本人にしか分かり得ない部分も多分にあるなと思いました。

一つの解釈として参考にしていただけたら幸いです。ではまた。

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