Kiana Ledéの「Natural」を考察&解説 / 愛が深いほど鋭く突き刺さる怒り

アリゾナ州フェニックス出身のR&BシンガーKiana Ledé(キアナ・レデ)の、ハロウィンにリリースされる3枚目のアルバム『Cut Ties』のリードシングル「Natural」。

R&Bクラシックテイストな心地よいメロディに乗せ愛溢れる歌ですが、その裏に隠された強い感情がMVで描写されていたりと、興味深い点がたくさんある曲です。

本記事では、そんな「Natural」の歌詞考察を中心に、和訳を用いながら内容を深掘りしていきます。

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「Natural」はどんな曲?

愛する人との身体的・精神的なつながりを自信たっぷりと描写した一曲です。自分の感覚や快楽、パートナーとの特別な親密さを正直に表現し、愛とセクシュアリティを「自然体」という文脈で肯定していく内容となっています。

「”Natural”は一緒にいる相手にめちゃくちゃ安心感を感じてて、「何だってやっちゃうよ、ウフフ」みたいな曲なの。」Billboard

官能的に露骨な表現もあるので、それほどに「相手と深いレベルで繋がっている」ということ示しているのかなと感じます。

音色も心地よく最高。だがミュージックビデオから伝わるのはおぞましさ


トラックは恋愛色の濃さを引き立てるクラシックなR&Bサウンドという印象。耳心地も良く最高なのですが、そんなトラックや愛溢れる歌詞とは裏腹に、ミュージックビデオからは憎悪の感情が伝わってきます。

まず初めに登場する意味深な一文、「Hell hath no fury like a woman scorned(地獄にも、見捨てられた女ほどの怒りはない)」

上記の文言は恐らく、1697年にイギリスの劇作家ウィリアム・コングリーヴが書いた戯曲『The Mourning Bride(喪の花嫁)』に由来します。正確な引用は「Heaven has no rage like love to hatred turned, nor hell a fury like a woman scorned」(天にも愛が憎しみに変わったほどの怒りはなく、地獄にも見捨てられた女ほどの激しい怒りはない)

つまり、女性が裏切られたときに、他に類を見ないほど強烈な怒りや復讐心を示す状況を指していて、それが「地獄にも勝る」と比喩的に表現されています。

MVのシーンにもその憎悪が示されていて、Kianaが鏡の前で歌う…というシンプルな映像かと思いきや、徐々に見えてくるのは血みどろの手や、洗面台にある大きなハサミ。

最後に「ああ、そういうことか」と腑に落ちるシーンがありますが、「可愛さ余って憎さ百倍」なメンヘラっぷりを滲ませたストーリーに仕上がっています。

ファンのコメントの中には「Powerful statement(力強いメッセージだ)」というのもあって、「怒り」や「憎しみ」がネガティブなものだけでないのかもなという点で面白いなと思いました。

キアナ自身は、好きなジャンルがホラーで、「MVにそれを活用したら面白いんじゃないか?」と考えたことからこのMVのアイデアになったそうです。

「ちょっと不気味な感じにしたかったのよ。ホラーが私の大好きなジャンルだからね。スプーキーな季節も大好きだし。で、初めて出た演技の仕事がドラマ版『スクリーム』のゾーイ役だったの。ネタバレすると、私そこで死んじゃうのよ(笑)。で、その死ぬシーンがめちゃくちゃ楽しくて!だから、また悪役やるか、死ぬシーンとかやりたいなぁってずっと思ってて。最終的には、自分でホラー映画書きたいくらい。そういうのにすごい情熱があるんだよね。で、「Natural」のMV作るときに、「あ、ここでまたホラーっぽいのやったら面白いんじゃない?」って思ったの。私がホラー系やるの楽しみにしてくれる人もいるし、そういうのも意識して作った感じ。」Billboard

アルバムに込めた思いから見えてくるメッセージ

本曲が収録されているアルバム『Cut Ties』は、前作『Grudges』と比べると、人間関係のわだかまりを糧にして、彼女の成長を反映していると言います。

「『Grudges』はもっと感情的な作品だったんだ。恋愛で経験してきた色んなトラウマに気づくって感じでさ。『Cut Ties』はもっと広い視点で、恋愛だけじゃなくて友情とか自分自身に対しても向き合ってるかな。どの作品も自己反省ってテーマが共通してるんだけど、今回はさらに成長にフォーカスしてる感じ。いろんな人とのわだかまりを振り返って、そこから得たものを通して、より強くなった自分を表現してるんだ。それと、最近の恋愛の変遷も見えてくるっていうか。」Rated R&B

「Natural」に関しては恋愛色が強いですが、恋愛での人間関係で経験した痛みや恨みの感情を、あえて猟奇的に描くことで「Powerful statement(力強いメッセージ)」へ昇華していたら面白いなと思いました。

「Natural」を深読みする

ここからは「Natural」の歌詞の内容を、和訳を用いながら考察していきます。(繰り返しの部分等は省略させていただきます。)

※ここでは直訳ではなく、独自の解釈や意訳を含みます。本記事の解釈が正解と思わず、「考察」「感想文」程度にお読みくださいますようお願いします。

ヴァース 1 / 相手に夢中、存在を待ち望む

I got tunnel vision
On your way in
Hope you racin’
Cuz Imma get me started
While I’m waitin’
Get impatient

Lyric

私はもうあなたしか見えてない
あなたが来るときは急いでほしいの
だって、もう準備しちゃうから
待ってる間に、イライラしちゃうの

ここでは、歌い手が相手に集中している様子を表現。「tunnel vision(トンネルビジョン)」は、目の前のことだけに集中して周りが見えなくなる状態を指します。

相手が来るのを待ち望んでいる状態で、「早く来てほしい」という期待が表れていたり、待ちきれず自分から行動を起こしてしまう積極性が見え隠れする部分です。

プレ・コーラス / 情熱的になるのは「簡単」な二人

You know my sheets
Clean as can be
So we can see
How effortlessly
We make a mess
Out of a bed
Got some love
And it shows

Lyric

ベッドのシーツはピカピカにしてあるの
だから、一緒に乱れるのがどれだけ簡単か見てみましょう
私たちの愛が溢れてるのが見えるから

この部分は、準備万端の状態で待っている様子を描写。ベッドのシーツが「ピカピカな状態」であることが、これから始まる親密な時間への期待感を示しています。

「簡単にベッドを乱す」という表現がありますが、「effortlessly(簡単に)」という言葉がポイントで、二人の関係が無理なく「自然に」情熱的になることを表しているのではないかなと思いました。

コーラス / 愛も快感も「自然」に溶け合う

You can play with anything you want to
I don’t hesitate, I do it all witchu
Feels natural
So natural

Lyric

好きに楽しんでいいのよ
私はためらわない、全部あなたと一緒にするわ
とても自然に、自然に感じるの

コーラス前半では、相手に対して完全にオープンであることを示しています。「何でも好きに楽しんでいいよ」と相手に自由を与えつつ、自分自身も相手に対してためらうことなくすべてを共有する姿勢が感じられます。

プレ・コーラスから醸し出していた二人の関係の「自然性」を儚くも高らかに歌っている部分です。

Love when you tell me how good it feels
Say you can’t believe this pussy’s real
So natural
Natural

Lyric

あなたが「気持ちいい」って言ってくれるのが好き
「コレが本物だなんて信じられない」って驚くのも
とても自然に、自然な感じ

後半では「相手がどれだけ満足しているか」に喜びを感じながら、「コレが本物だなんて信じられないと言う」と、歌い手が自分のセクシュアリティに自信を持っていることが伺える部分です。

「コレ」と訳したのは、女性器を指すスラング「pussy」の部分ですが、直接的な表現な分、相手からの非常に高い評価や称賛を受けていることを示しているように感じました。

自分に対する肯定感を軸に、全てが「自然」と感じられることが、この歌のテーマだと分かる部分でもあるように思います。

ヴァース 2 / 私の全てを見せる、唯一の人

Imma open that side of me
Only one to get to see that
Like you winnin’ the lottery
I want all of that good feedback
Vibrators on Bluetooth
And your fingers taste good too
Like you feedin’ me good food

Lyric

私の特別な一面を開くわ
それを見れるのはあなただけ
まるで宝くじに当たったみたいにね
その反応が全部欲しいの
Bluetoothで動くバイブ
あなたの指もとても美味しいわ
まるで美味しいごはんを食べてるみたいに

ヴァース2の冒頭では、相手に特別な一面を見せることに対する期待感と喜びを描写。「あなたが自分の特別な側面を見られる唯一の存在」であるとし、それを「宝くじに当たる」ほど特別でラッキーな出来事だと感じさせています。

また、「Bluetoothで動くバイブ」や「あなたの指が美味しい」という具体的でセクシャルな描写を用いている部分からは、「愛全開」な雰囲気や満足感を感じさせるなと思いました。

プレ・コーラス / 相思相愛の関係

I’m on back
Then your lap
You grab my neck
And I’ll do the rest
I turn around
Look at me now
You in love
And it shows

Lyric

私が仰向けになって、次はあなたの膝の上
あなたが私の首をつかんで、あとは任せて
振り返って、今の私を見て
あなたが愛してるのがわかるわ

二番目のプレ・コーラスでは、「あなたが私の首をつかんで」など、セクシャルな文脈でリードする臨場感を描写し、二人の相互作用が見られます。

バランスの取れた関係性を示して、相互に愛があふれているのが明らかだとしています。

– コーラス繰り返し 省略 —

アウトロ / 最高な関係と満足感…

Love when you up inside of me
Got me screamin’ like ooh bay baby

Lyric

あなたが私の中にいるときが最高
思わず「ねぇ、ベイビー」って叫んじゃう

アウトロは二人の行為の最中の感情について、特に喜びや満足感を表現しています。

これを歌っているのがMVの最後のオチのシーンなのですが、高らかな愛情(トラックのメロディの柔らかさも含め)と、映像とのギャップがありすぎて、そのコントラストがアートだなと思いました。

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Kiana Ledé – Natural (Official Music Video)

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Kiana Ledé – Natural (Official Music Video)

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