最新R&Bを軸にしたプレイリスト「Take It Easy」Vol.53

Spotify、Apple Musicで公開しているR&Bを軸にしたレイドバックミュージックプレイリスト「Take It Easy」更新お知らせ記事です。

プレイリストの中から5曲をピックアップし、アーティストや曲についての紹介をします。というお題目でいつもやってましたが、今回は約4ヶ月ぶりの更新ということで10曲をピックアップ。いつもよりボリューム感のある感じでお送りします。

プレイリストはこちら。更新の度に内容が変わるので「いいね」で常にチェックしてもらえると嬉しいです。

Spotify

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10 Picks

1.SAILORR – “W1LLU U L13?”

フロリダ州ジャクソンビル出身の新鋭R&Bシンガー、SAILORR(セイラー)のシングル。2024年にTikTokで火が付いた「POOKIE’S REQUIEM」に続く楽曲で、4月4日にリリースされたデビュー作『DOWN BAD』にも収録された一曲です。

タイトルは歌詞にも出てくる「Will you lie?(私に嘘をつくの?)」を表しており、恋愛における「嘘」と「信頼の揺らぎ」をテーマにした、感情むき出しな内容。

「ウソつくの?」とコーラスで何度も繰り返し問いかけ、「本当のこと言ってよ」「たとえ必要なときでも、ウソつかれるのほんと無理」と歌う歌詞は、相手を信じたい気持ちと裏切りへの恐怖がぶつかり合う、痛々しいほどリアルな心情そのもの。

ブリッジで「愛してるから」と歌われるように、愛ゆえの深い葛藤が描かれています。

サウンドはミニマルで浮遊感のあるR&B。派手さはないものの、リバーブのかかったサウンドスケープがSAILORRの表情豊かなボーカルと絶妙に溶け合い、メランコリックな世界観があります。

ハリー・ベイリーによるカバーやジャスティン・ビーバーのSNS紹介、サマー・ウォーカーによるリミックス提供など、すでに多くの大物アーティストからも注目を集めるSAILORR。大型新人として期待されている人物です。

『DOWN BAD』

2.Avara, AYUSH – “TEMPTED”

アメリカ・アトランタ出身、ロサンゼルスを拠点に活動するインド系アメリカ人のシンガーソングライター/プロデューサーAvara(アヴァラ)と、マルチ奏者AYUSH(アユシュ)によるコラボレーションシングルです。

ゆったりとしたR&B/ソウルのグルーヴに乗り、Avaraのとろけるように甘い歌声が官能的で妖艶な雰囲気を醸し出す一曲。彼女の声は、「天使のよう」と評される透明感を持ちながらも、楽曲テーマである「誘惑」を体現するかのような、抗いがたい魅力も秘めた歌声の持ち主です。

歌詞で描かれるのは、恋愛における誘惑や、それに揺れ動く複雑な心情。そこには単なる弱さだけでなく、「他に誰もいないと伝えたのに、なぜ私を待たせるの?」といった相手への問いかけのような強い意志も垣間見え、未練や罪悪感など、中毒性はらんだ関係を描き出すような内容となっています。

サウンド面では、AYUSHが奏でる生楽器の温かみが、楽曲に深みと豊かな質感を与えていて、特に艶やかなサックスの音色は非常に印象的。曲全体のムーディーな雰囲気を決定づける重要な役割を担っています。

3.Shelby Ruger – “HARD 4 ME”

ヒューストン出身の新進気鋭のシンガーソングライター、Shelby Ruger(シェルビー・ルガー)のシングル「HARD 4 ME」。プロデュースは同郷ヒューストンのRomy Ladetが担当。

モダンなR&Bを基調としながらも、重低音が程よく効いたヒップホップ的なビートが印象的。そこに重なるソウルフルで伸びやかなShelbyのボーカルと、コーラスやシンセが生み出すどこかドリーミーでネオソウル的な深みのある響きが、独特の雰囲気を醸し出しています。

ヒップホップの骨太さとドリーミーな浮遊感が同居する彼女ならではの音楽性を感じさせてくれる一曲です。

4.Jessie Reyez – “**GOLIATH**”

コロンビア系カナダ人シンガーソングライター、Jessie Reyez(ジェシー・レイズ)の楽曲。2025年3月リリースの最新アルバム『PAID IN MEMORIES』に収録されたこの曲は、自己犠牲的な愛をテーマにした心温まるラブソングです。

これまで、楽曲”Figures”に代表されるように、失恋の痛みや心の傷を赤裸々に歌い上げ、どこか闇を抱えたようなイメージもあった彼女。しかしこの「GOLIATH」は、そんな従来のイメージを一新させ、彼女の新たな一面を強く印象付けた一曲です。

When I say I love you (You)
I mean I would pull every star from the sky down
Or square up with any Goliath
I’ll moonwalk it through any fire
When I say I love you (You)
I mean I ain’t tryna do this life without you
It’s a bad day until I’m around you
I was ‘bout to give up ‘til I found yougenius

Lyric

「愛してる」って言うときはね(あなたに)
本気で空の星すべてを引きずり降ろすくらいの覚悟
巨人にだって立ち向かうし
どんな火の中だってムーンウォークでくぐり抜ける
「愛してる」って言うときはね(あなたに)
あなたなしの人生なんて考えられないってこと
あなたがそばにいない日は、全部バッドデイ
出会うまでは、もう全部諦めかけてたの

「自分が“失恋ソングの人”って、そんなに定着してたなんて気づかなかったの(笑)」PS

「こういう明るめの曲を出すと、みんなが“あれ?ジェシー鬱じゃないの?”って言ってくるのよ。実際、“もう病みレイズ”じゃないね”って言った人もいて。さすがに“マジか…”って思った(笑)」PS

本作で歌われるのは、大切な人のためならどんな困難にも立ち向かうという、どこまでも献身的でピュアな愛情。タイトル(旧約聖書の巨人ゴリアテ)が示す通り、「どんなGoliath(困難)にだって立ち向かう」という強い意志が込められています。

この曲は、彼女が姪の誕生に際して感じたという、純粋な愛情体験が制作のきっかけになっているのだとか。

ソウルフルで柔らかな質感と、ミニマルでスロウなビートが心地よく、ジェシーの持ち味であるキーが高く芯のある歌声が際立ちます。ある種の抑制されたトラックと、彼女の情熱的なボーカルとのコントラストが素晴らしいです。

GOLIATH(ゴライアス/ゴリアテ)

旧約聖書に登場する伝説の巨人兵士。小柄な少年ダビデに石一発で倒されるという逆転劇から、「圧倒的な強敵」や「巨大な困難の象徴」として現代でもよく引用される存在。英語圏では「挑むには無謀すぎる相手」や「絶対的な障害物」を意味する隠喩として使われることも多い。

『PAID IN MEMORIES』

5.SZA – “Take You Down”

SZA(シザ)の大ヒットアルバム『SOS』のデラックス版としてリリースされた『SOS: LANA』に追加収録された楽曲「Take You Down」。

もともと『LANA』は2024年12月に15曲入りでリリースされましたが、2025年2月にアップデートされ、待望の新曲4曲が追加。「Take You Down」はその中の一つで、以前からSNSで一部が公開され、ファンの間で正式リリースが熱望されていた未発表曲でした。満を持して届けられたこの曲は、SZAの進化を感じさせる一曲として注目を集めています。

メロウでささやくようなSZAの歌声と、リズム感があるようでないような歌い口が幻想的で、中毒性の高いオルタナティブR&Bサウンドを構築。歌詞は若干ドロっとしていて、相手に翻弄される複雑な恋愛模様が赤裸々に描かれています。

「Never fight over community dick(みんなと寝るような男を巡って争うなんてゴメンよ)」

と挑発的なラインで強さを見せる一方で、

「Did you mean all the shit you said the other day?(あの日の言葉、本気だったの?)」

と不安をのぞかせたり、

「How many ways can you take me down?(何通りに私を傷つけられる?)」

と繰り返すコーラスでは、傷つく痛みとそれでも惹かれてしまう切なさが同居しています。

ある意味、鬱々とした展開とも言えるこの感情の揺らぎを、ただ暗く描くのではなく、官能的でエモい世界観にまとめ上げているのがSZAの凄さです。彼女自身の弱さやネガティビティすらも、赤裸々な表現を通して完全に武器に変えているのがさすがです。

ちなみにトラックは「The Weekend」のThankGod4Codyと新進気鋭のDexter Suhnが手掛けています。

6.Muni Long – “Slow Grind”

R&Bシンガーソングライター、Muni Long(マニー・ロング)の新曲。バレンタインに届けられた、とろけるように甘美なベッドルーム・ジャムで、大人のためのラブソングといった雰囲気の一曲です。

One time, I wanna slow grind, baby
All night, I wanna slow grind, baby
That’s right, I wanna slow grind, baby
All night, all night
One time, I wanna slow grind, baby
All night, I wanna slow grind, baby
Damn right, I wanna slow grind, baby
All night, all night
I wanna slow grind with you all nightgenius

Lyric

一度でいい、スローグラインドしたいの
一晩中、あなたと踊りたい
そうよ、スローに感じたいの
朝まで、ずっと
たった一度でいい、スローグラインドを
夜が明けるまで、スローに
間違いなく、あなたと感じたい
ずっと、一晩中
あなたとゆっくり、朝まで踊りたい

恋人と一晩中ゆっくりと愛を育みたいという、ストレートで情熱的な想いが綴られていて、恋愛へのポジティブで熱い気持ちが伝わってきます。

バラードに近いテンポ感ですが、自然と体が揺れてしまうような心地よいノリも備わっています。穏やかな気持ちと、内側から湧き上がるような感情が混ざり合う魔力を感じる曲です。

7.Lola Moxom – “7:21”

ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、Lola Moxom(ローラ・モクソム)のデビューEP『OXO』に収録されている曲。

感情を紐解くような歌い口は、繊細な感情の動きを丁寧に歌い上げるようで、ぐっと引き込まれるような感覚を覚えます。アコースティックギターのリフと、生ドラムが刻むリズムが中心となったタイムレスな響きも極上。

この曲のリリックを詳細に確認できていないのですが、「愚かな男性にひどい扱いを受けたすべての人に捧げる」と語られていて、

I spent so many nights to forget(忘れるために何度も夜を過ごした)

と歌い上げ、失恋の痛みや、そこから立ち直ろうとする強さが表現されています。「7:21」というのは時間のことで、別れの瞬間を表しているようです。(”woke up to the words we’re over”→「私たちは終わり」って言葉で目が覚めた)

『OXO』

8.Dende, LUCIIA – “The Louvre”

テキサス州ヒューストン出身のR&BアーティストDende(デンデ)と、キューバとスウェーデンにルーツを持つシンガーソングライターLUCIIA(ルシア)のコラボ曲。

デンデがDef Jamと契約してから初となるリリース作『I am, because you are…』に収録された曲で、恋人を芸術作品に例えたラブソングです。

You’re a masterpiece
Precious work of art, just say it’s all for me
They don’t make ‘em like you anymore, I’ve been
Painting with gray for too long

You’re a masterpiece
Basquiat would try to make you from a dream (From a dream, oh)
Finally, you came along and changed the scene
Painted with gray for too long (Ooh)genius

Lyric

君はまるで傑作さ
大事な芸術作品――全部オレのためって言ってくれよ
もう君みたいな人はどこにもいない
ずっと無彩色な世界を描いてた

君はまさにマスターピース
バスキアだって夢から君を描こうとするだろう(夢の中から)
やっと現れてくれて、オレの景色を塗り替えてくれた
あまりにも長く、色のない世界で生きてたんだ

​Dendeは「君は傑作さ。バスキアも夢から君を描こうとしただろう」と歌い、インスピレーションを失っていたアーティストが、恋人との出会いによって再び創造性を取り戻す過程を描いています。

冒頭では、

Think that’s it time I found my muse, you fit the description(そろそろ俺のミューズを見つけなきゃな、君がまさにピッタリなんだよ)

と歌っていますが、「ミューズ(muse)」という言葉は、芸術家にインスピレーション(創作意欲)を与える存在のことだそう。

「ミューズって言葉は、アーティストにインスピレーションを与える存在のこと。でも今回のシングル”The Louvre”は、インスピレーションも創造力も感じられなかったような時期に、それをある人との出会いで取り戻せた、という内容なんだ」Rated R&B

単なるラブソングではなく、デンデがアーティストとしての再生と成長、を描いたレジリエンスソングでもあります。

『I am, because you are…』

9.DESTIN CONRAD, Teezo Touchdown – “THE LAST TIME”

フロリダ出身のDestin Conrad(デスティン・コンラッド)とテキサス出身のTeezo Touchdown(ティーゾ・タッチダウン)のコラボレーション曲。二人の声が織りなす豊かな色彩に強く引き込まれる一曲で、切ないテーマを扱いながらも、どこか温かく包み込むような響きがとても印象的です。

楽曲のテーマは、愛と喪失、関係の終わりに対する複雑な心境など。歌詞には

「Damn, damn, damn(=クソ、クソ、クソ)」

というやるせない感情を表す言葉や、

「This is the last time(これが最後だ)」

という決意とも諦めともつかないフレーズが繰り返され、終わらせたいのに終われない、もどかしい気持ちが感情的に描写されています。

テーマとは裏腹に、ミッドテンポのR&Bと、ゴスペルを思わせるような豊潤なコーラスワークが心地よく、不思議と感じられる高揚感もすばらしいです。

10.UHMEER – “FLOATING”

伝説的ヒップホップDJ、DJジャジー・ジェフを父に持つ新進気鋭アーティスト、UHMEER(アミール)の新曲。

注目は、プロデュースを手掛けたのが父であるDJジャジー・ジェフと、UK音楽シーンの重鎮カイディ・タタムという夢のようなコラボレーションであること。

ジャジー・ジェフの確かなヒップホップ・ビートセンスと、カイディ・タタムによるジャズ/ソウル由来の豊かでスムースなコードワークが融合。UHMEERの滑らかなフロウと相まって、タイトル通り宙を漂うような開放感に満ちた、極上のソウルフル・ヒップホップ・バウンスを生み出しています。

Floatin
know when I wanna fly
I can decide
cause I’m

floatin
toking smoke when
I arise my eyes
are bloodshot
cause I’m

floatin
no I don’t mope
I keep it in my mind
until it’s time
to go

floatin
on any beat
keep my ears on high
they don’t lie
that’s why I’m

floatin

Lyric

ふわふわ浮いてる
飛びたいタイミングは、自分でわかる
決めるのは俺自身
だって俺は

浮いてんだ
煙をくゆらせながら
目を覚ませば
目は真っ赤
だって俺は

浮いてんだ
落ち込んだりはしねえ
心の奥にしまっとく
その時が来るまで
静かに構えてる

どんなビートの上でも
耳はフルで開いてる
音は嘘つかねえ
だから俺は

浮かんでるんだ

「Floating, know when I wanna fly(浮かんでいる…でも自分が飛び立ちたいタイミングはわかっている)」

という歌詞にも表れているように、本作のテーマは現状からの飛躍や解放への願望。軽やかで心地よい浮遊感の中に、未来へ向かう前向きな意志が込められています。

聴いているだけで心が軽くなり、リラックスしたい時にも、気分を上げたい時にもぴったりな、洗練されたグルーヴが魅力です。

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