2024年6月 / 今月のチェックマーク作品リスト

その月にリリースされたもので、チェックマークを是非とも付けておきたい作品(アルバム・EP・ミックステープなど)をピックアップする記事です。

今回は月末の作品も含みます。

ということで、6月は以下のラインナップとなっております〜。

1. Durand Bernarr – 『En Route』


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こちらは5月末リリース作。オハイオ州クリーブランド出身のシンガーソングライター、プロデューサー、バックボーカル、スケーターDurand Bernarr (デュランド・バーナー)の8曲入りEP。

ソウルフルでファンキーな色合いを醸しながらも、ジャンルの垣根を超えた感情豊かな曲が詰まった作品です。

「En Routeは、私の経験とアーティストとしての進化の産物だ。これは、私が感じていること、必要としていること、そしてどう扱われたいかを正確に表現したものだよ。」durandbernarr.com

「これらの物語を語りながら、私にインスピレーションを与える時代、ジャンル、文化、楽器、そして音楽のレジェンドたちを取り入れたかったんだ。」durandbernarr.com

「Unknown」や「Fist Bump ft. Free Nationals」など、リードシングルのMVを通じて、ビジュアル面にも力を入れたという本作。ぜひ映像も織り交ぜながらお楽しみいただければと思います。

“Unknown” (Official Music Video)
“Fist Bump” (Official Music Video)

2. Tems – 『Born in the Wild』


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ナイジェリア出身のシンガーソングライター、プロデューサーTems(テムズ)のデビューアルバム。

自分自身のすべてを受け入れることをテーマにしているという本作は、自身が直面した困難や挑戦を乗り越えてきた経験を通じて、自己を受け入れる重要性や、普通の女の子から国際的なアーティストへと成長していく過程を描いています。

「私が音楽の道に進もうと決めたときから今に至るまでのことを考えると、ナイジェリアの少女がテムズという人物になったというストーリーを伝える最善の方法を考えなければならなかった。そしてその人物は荒野で生まれたんだ。確かに私はアフリカで生まれたけれど、荒野というのは、私が精神的に直面した困難や、9時から5時までの勤務やから、誰も信じてくれず、みんなに笑われる中で歌おうとすることへの挑戦のことよ。」Grammy

アフロビートを基盤にしつつも、R&B、ソウル、ラップなどのジャンルを融合させ、彼女の多彩な音楽スタイルが反映されています。

3. ESTA. – 『FRANCIS』


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南カリフォルニア出身のDJ・プロデューサーESTA.(エスタ)のデビューアルバムです。

客演に迎えられているアーティスト陣は、今のR&Bシーンの逸材ばかりが勢揃い。様々な歌声が、ESTA.の本名である「FRANCIS(Francis Esteban)」の名の下、ムーディーな楽曲からダンスミュージックまで幅広くカバーされています。

4. KAYTRANADA – 『TIMELESS』


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ハイチ生まれカナダ育ちのアーティスト、KAYTRANADAの最新アルバム。全21曲からなる超大作で、Childish GambinoやChannel Tres、Rochelle Jordanなど多彩なゲストが参加しています。

ハウス、ファンク、ディスコの要素の基盤を感じさせつつ、90年代のドラムサンプルな「Dip Sweat」があったり、インストでバシッと魅せたり、遊び心も感じました。

クラシックにも感じられる一方で、プログレッシブでもあるので、まさにタイムレスな一作と言えるかもしれません。

5. Normani – 『DOPAMINE』


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アトランタ生まれ、ニューオーリンズ育ち(のちにヒューストンへ移住)のシンガーNormaniのソロデビューアルバムです。

ファンの期待とは裏腹に、リリースまで時間がかかったと言われている本作。中途半端な作品を共有したくないという思いもあり、家族の健康問題などプライベートでの困難を乗り越えて今期リリースに至ったそうです。

南部の音楽のリスペクトや、彼女の実力を示していて、文句無しに成熟した13曲だと思いました。

Normaniがファンを大切にする気持ち、人間としての強さ、音楽に対する熱量の高さも感じられる作品です。

6. Lalah Hathaway – 『VANTABLACK』


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シカゴ出身のシンガーソングライターLalah Hathaway(レイラ・ハサウェイ)の最新作です。

極端な黒さで知られており、光をほとんど反射しないため、非常に深い黒として見える黒色塗料「Vanta Black」をタイトルに据えた本作。自身がこれまでで最も黒人としてのアイデンティティを強く感じている状態を表現するためにこの名前を選んだそうです。

「Vanta Blackは、世界で最も黒い色の名前よ。この色は非常に黒くて、車や他の製品に使われている。今、この色を使ったプロジェクトに取り組んでいて、私自身も今、とてもブラックな気分を感じているから、この名前をプロジェクトに付けたのよ。」Way Up With Angela Yee

これらは、アメリカのニュースを見たり、南アフリカに行ってアメリカの社会的な重荷(黒人として直面する様々な社会的問題や差別など)から解放された経験も影響しているそうです。

7. Raveena – 『Where the Butterflies Go in the Rain』


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インドにルーツを持つニューヨークのシンガーソングライターRaveena(ラヴィーナ)の最新アルバム。彼女の内なる成長とスピリチュアルな旅を反映しているそうで、Raveenaの瞑想や自然とのつながり、音楽への深い愛などが込められた作品です。

バラードからリズミカルなアップテンポまで様々ですが、一貫して生音的で、目の前で演奏を聴いているような感覚に陥ります。癒しも感じます。

ちなみにアルバムタイトル「Where Butterflies Go In The Rain」は、彼女がハイキング中に未来の子供たちの声を聞き、その声が「蝶は雨の中でどこに行くの?」と尋ねたことからインスピレーションを得て名付けたそう。

「未来の子供たちのことを考えていたの。ハイキング中に未来の子供たちが一緒にいるのを想像することがよくあって、彼らの声が聞こえるんだ。その声の一つが”ママ、蝶は雨の中でどこに行くの?”って聞いてきて、”なんて素敵な質問なんだろう”って思った。そのフレーズを歌詞の一部に使おうとしたんだけど、歌詞を書いているうちにそのまま歌詞に組み込まれたの。そして、アルバムのタイトルに自分の名前を使うことも考えたけど、このタイトルをチームに提案したら、”間違いなくそれが一番いい”って言われたんだ。」Forbes

彼女の想像の中で未来の子供たちとの対話を楽しんでいて、その中で生まれた美しい問いかけが、アルバムのタイトルにぴったりだと感じたということと解釈しました。

Raveena自身の内なる世界が垣間見えるエピソードで、まさにスピリチュアルな探求がなされている作品だと思いました。

8. Bilal – 『Live at Glasshaus』


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フィラデルフィア出身、ニューヨーク在住のシンガー・ソングライター/プロデューサーBilal(ビラル)のライブアルバム。

本作は、Robert GlasperやQuestlove、Common、Burniss Earl Travis IIなどの著名なミュージシャンと共に、彼の代表的な楽曲を再演。また、未発表アルバム『Love For Sale』からの楽曲や、Commonのアルバム『Like Water for Chocolate』の曲も取り上げられています。

ライブアルバムということで、即興性と高いエネルギーが感じられ、既存の曲が生の空気を纏いながら再解釈されています。

9. NxWorries – 『Why Lawd?』


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Anderson.Paak(アンダーソン・パーク)と、プロデューサーのKnxwledge(ノレッジ)からなる西海岸のコンビNxWorries(ノー・ウォーリーズ)の最新作。前作『Yes Lawd!』から8年ぶりのリリースとなる本作は、H.E.R.をフィーチャーした「Where I Go」や、Thundercatをフィーチャーした「KeepHer」など、恋愛や個人的な葛藤を中心とした楽曲で構成されています。

ハズレのないKnxwledgeのプロダクションは、今作では更にソウルフルで、メロディアスなものばかりなのが個人的に◎でした。

10. Maeta – 『Endless Night』


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インディアナ州インディアナポリス出身のシンガーMaeta(メイタ)の新作EP。先述の、今月自身のアルバムもリリースしているカナダの名プロデューサーKAYTRANADAが全面プロデュースした作品です。

2020年から共に仕事をしているという二人。デビューアルバムの間のちょっとした作品のつもりが、素敵な楽曲に恵まれて今回のEPリリースに至ったそうです。

「2020年から彼と一緒に仕事しているわ。最初は”Teen Scene”という曲をやった。そして最近の2つ前のプロジェクトでは”Questions”という曲も一緒に作ったわ。彼は本当にクールで、何を頼んでも「いいよ、送ってくれ」って感じ。それで、ファンを待たせないようにしながらデビューアルバムを作る間に、夏のダンスプロジェクトを出すことにしたんだ。最初はちょっとしたものを出すつもりだったんだけど、結局すごく気に入ってしまって、大きなフォトシュートをやったり、ビデオも撮影したりした。本当に楽しみだし、とても誇りに思っているの」Radio One D.C.

まさに夏のダンスミュージックにぴったりといった、心地よくメロディアスな曲も多く、見事なコラボレート作品だと思います。

それにしてもKAYTRANADAの活躍ぶり、本当にすごいですね。

11. Yo Trane – 『XTC』


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ガボン共和国リーブルビル生まれ、フランス育ちのシンガーソングライターYo Trane(ヨー・トレイン)の作品です。

本作は、『XTC』という、タイトルが示す通りのエクスタシー(恍惚感)を感じさせる、艶やかな楽曲で構成されたR&Bばかり。ダークでムーディーな雰囲気が印象的で、相対する彼の透き通った歌声とのコントラストが素晴らしいです。

12. Kehlani – 『CRASH』


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カリフォルニア州オークランド出身のシンガーソングライターKehlani(ケラーニ)の最新アルバムです。

本作はこれまでの作品とは異なり、「クラブバンガー」を作ることを意識し、楽しさや活気に満ちた曲作りに重点を置いたのだとか。

また、アルバム全体の一貫したテーマが「現時点の自分を紹介すること」だそうです。ケラーニはアルバム制作において、初めて「自分の感覚」に集中し、その結果として、曲調は異なっていても、アルバムのすべての楽曲が同じ感覚を共有していると考えているそうです。

「私はこれまで「クラブバンガー」と呼ばれるような曲を作ったことがなかった。自分の声がクラブで流れて、人々が踊っているのを聞くことができるなんて、今まで考えたこともなかったんだ。それが自然に起こったらラッキーだなとは思っていたけど、意図的にそうしようとしたことはなかった。でも今回はそれを作りたくて、実際に作ってみて、人々が自分の作った曲に合わせて体を動かしているのを見るのがどれだけ気持ちいいかを理解したわ。それは、みんなが曲に完全に入り込んで、外で解放感を感じるという集団的な感覚で、これまでに私がやったこととは全く違うものだよ。」102.7KIISFM

関連記事:Kehlani(ケラーニ)/ 成長し続けるリアリスティックR&Bアーティスト

13. Lucky Daye – 『Algorithm』


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ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のシンガーソングライターLucky Daye(ラッキー・デイ)の新作アルバム。本作は、自分自身を知るため、「神が話しているかのように自分に語りかけること」をテーマにしたのだとか。

「僕の心構えは、神が僕に語りかけているかのように自分自身に話しかけたいというものだった。何か進歩的なものがあるとすれば、それは神の声だと思う。だから、アルバム全体を通じて、自分自身に手紙を書くようにしてたんだ。僕は誰なのか?僕のアルゴリズムとは何なのか?」Billboard

また、自己理解を深め、自分の好みや嫌いなことを見つめ直す過程を表現したといいます。アルバム全体を通じてネガティブな感情を排除し、ポジティブなエネルギーを維持しようと努めたそう。聴く人々が彼の音楽を通じて同じような前向きな変化を感じ取ってほしいという願いも込められています。

「このアルバムは、ネガティブなものすべての上に立ち続けるような感じだった。僕にとってそれは珍しいことだ。天秤座として、僕はバランスを必要とする。幸せと悲しみの両方が必要だけど、このアルバムでは悲しみを取り除き、ただ幸せになり、自分自身を奮い立たせたいと思ったんだ。そして、聞く人にもそれが伝わることを願っているよ」Billboard

関連記事:セクシーかつスモーキーなシンガーLucky Dayeとは / 成功までの軌跡

14. Channel Tres – 『Head Rush』


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カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー/プロデューサーのChannel Tres(チャンネル・トレス)のデビューアルバム。彼特有のスタイルとされる「Compton House」を基盤に、ファンク、ハウス、ヒップホップなどの要素が融合した作品です。

「このアルバムでは、俺のストーリーを本当に聴いてもらえるし、俺がアーティストとしてここに来た理由、ただのDJではないことを本当に聴いてもらえると思う。」DJ MAG

自身の人生の物語を語り、彼がアーティストとしてどのように進化し、どのように音楽を通じて自己を表現してきたかを作品では深く掘り下げています。

また、トレスの音楽の基盤であるダンスミュージックは、彼の人生において永遠に大切なものであり、今回のアルバムにおいても「ダンスミュージックからの脱却」ではなく、むしろその「拡張」であるそう。『Head Rush』は彼の音楽スタイルを広げつつも、根底にあるダンスミュージックの要素を維持していることが一つの要素となっているようです。

ちなみに「Head Rush(強い幸福感や陶酔感)」とは、彼にとって音楽やダンス、愛犬の散歩など、興奮することをしている時のことを指すそう。

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