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セクシーかつスモーキーなシンガーLucky Dayeとは / 成功までの軌跡

Artists R&B

自身を「絶望的なロマンチスト」と呼び、時に音楽スタイルを「Future Classic」と呼ぶ新進気鋭のシンガーソングライターLucky Daye。複数のグラミー賞にノミネートされた経験を持ち、NPRの「10 Kings Of R&B」の一人にも選ばれた新世代の注目シンガーです。

今回はLucky Dayeについて深堀り。成功までの軌跡、彼に与えた音楽的な影響、作品への想い、ヒットソングなどを紹介します。

Lucky Dayeについて知りたかった方は是非お立ち寄り下さい。

目次

  1. Lucky Dayeのプロフィール
  2. Lucky Dayeのヒットソング
    1.Love You Too Much
    2.Roll Some Mo
    3.Real Games
    4.Late Night
    5.Floods
    6.Over
    7.Misunderstood
    8.How Much Can A Heart Take ft. Yebba
    9.Shoulda ft. Babyface
    10.Buying Time
  3. Lucky Daye成功への軌跡
  4. Lucky Dayeへの音楽的影響
  5. 注目したい二作品
    グラミー賞ノミネート作『Painted』
    女性に光を当てるコンセプティブ作品『Table for Two』

Lucky Dayeのプロフィール

Lucky Daye(ラッキー・デイ)は本名David Debrandon Brown(デヴィッド・デブランドン・ブラウン)。ルイジアナ州ニューオーリンズ出身、1985年9月25日生まれのシンガーソングライターです。モダンかつソウルフルな歌声を持ち、伝統的でありつつも、どこかプログレッシブ。「ダーク」「セクシー」「スモーキー」などと表現されることもしばしばです。

伝説的なプロデューサーD’Mileと協力した『Painted』、『Table For Two』などのヒットプロジェクトで人気を博し、グラミー賞にもノミネート。米・公共ラジオネットワークであるNPRの「10 Kings Of R&B」の一人にも選ばれました。

さらに2021年には6名のシンガーをゲストに迎えた、女性に光を当てるコンテプティブな作品『Table for Two』をリリースしています。

厳格なキリスト教の宗派で育った経験、災害・貧困などの苦しい経験を血肉として成功を掴んだ苦労人でもあり、優れたソングライティング能力を持つ人物でもあります。

Lucky Dayeのヒットソング

1.Love You Too Much

リリース:2019年4月26日
収録作品:『Painted』

アルバム『Painted』の三番目のシングルカット。DJ Camperがプロデュースした、シンセの響きが印象深い一曲です。

報われない愛、傷ついた心を歌ったこの曲は、8分という長尺をメロウな質感で見事に歌い上げています。

2.Roll Some Mo

リリース:2018年10月26日
収録作品:『Painted』

Lucky Dayeの記念すべきデビュー曲で、『Painted』のオープニング曲。第62回グラミー賞では「最優秀R&Bソング賞」、「最優秀R&Bパフォーマンス賞」にもノミネートされました。

パートナーとのライフスタイルを描いている曲で、人生の現実逃避する様子も描かれています。この曲はBill Withersの楽曲「Use Me」のハイハットやキックドラムからインスピレーションを得たのだとか。

3.Real Games

リリース:2019年2月6日
収録作品:『Painted』

第62回グラミー賞で「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス」にノミネートされた一曲。ゆったりとしつつもファンキーなグルーヴがあり、オールドスクールさを感じます。

バンドとジャムするミュージックビデオもまた良いですね。

4.Late Night

リリース:2018年11月9日
収録作品:『Painted』

『Painted』に収録の、セクシーかつダンサブルな一曲です。ビルボードのある記事では、

“Late Night”では、Frank OceanとAnderson .Paakの境界線を曖昧にしたエレクトリック・バップを聴かせてくれます。Billboard

と表現されていたのが分かりやすく、興味深かったです。体だけじゃなく心も踊るようなナンバーですね。

5.Floods

リリース:2019年5月24日
収録作品:『Painted』

この曲はLucky Dayeが相思相愛と思っていた女性との歌です。お互いの関係においての理解不足を嘆いています。

「彼女は僕を愛していると思っていたんだけど、わからないんだ。彼女は僕から逃げたように感じさせたけど、僕が何をしたのかわからなかったし、彼女も僕が何をしたのかわからなかったんだ」Genius

「Floods(洪水)」は涙やお酒を表しているそうで、特に3:57~辺りのトラックが濃くなる部分は、溺れる様が見事に表現されていると思いました。

6.Over

リリース:2021年9月22日

2022年に予定されている彼の2作目のアルバムからのリード・シングルです。Musiq Soulchildの2002年のヒット曲「Halfcrazy」をサンプリングした一曲で、何度も戻ってくる不健全・有害な恋愛関係や、ちょっとした毒性(中毒性)についてをテーマにした歌です。

デイはパンデミックの時期にこの歌と同じ様な状況に陥って、自分自身について多くのことを学んだのだとか。

インフルエンサーのJordyn Woodsをフィーチャーしたミュージックビデオは、映画『恋はデジャ・ブ』をモチーフにしているそう。タイムループする様子が描かれ、最後は意味深な展開に落とし込まれています。

7.Misunderstood

リリース:2019年2月6日
収録作品:『Painted』

スローダウンなピアノサウンドが心地よくも悲しげな一曲。自分の気持ちを表現したいが、「Misunderstood(誤解されている)」方が良いのかもしれないとの想いも告げている歌です。

8.How Much Can A Heart Take ft. Yebba

リリース:2021年2月12日
収録作品:『Table For Two』

EP『Table For Two』に収録。アーカンソー州ウェストメンフィス出身のシンガーソングライターYebbaをフィーチャーした一曲です。

この曲が出来たきっかけは、偶然同じ時期にLAに居たことが幸いしたのだとか。

「アトランタの友人が彼女にDMを送ったところ皮肉にも僕たちは同じ時期にLAにいたから、彼女が僕のマネージメントに連絡を取ってくれて、アリの曲とデュエットの話がすでにあったから実現したんだ」Hypebeast

9.Shoulda ft. Babyface

リリース:2020年5月27日
収録作品:『Painted (Deluxe Edition)』

Lucky Dayeのデビューアルバム『Painted』のデラックス・エディションに収録。伝説的なシンガーソングライターBabyfaceをフィチャーした一曲です。

Toni Braxtonの「Love Shoulda Brought You Home」をサンプリングしていて、仲違いした人間関係を描いた歌です。

この曲は1992年に公開された映画『ブーメラン』の中で、ハル・ベリーがエディ・マーフィに「Love shoulda brought your ass home last night」と言ったことに由来しているのだそう。

10.Buying Time

リリース:2019年9月18日
収録作品:『Painted (Deluxe Edition)』

こちらも『Painted』のデラックス・エディションに収録された一曲。

「”Buying Time”は明るい光のトラックだよ。愛を感じるためにお金を使うのは当たり前、という感じにしたかったんだ。」L’ART MAGAZINE

軽快なギターを基調とした爽やかな作品です。

Lucky Daye成功への軌跡

制約の多かった少年時代

ニューオーリンズ育ちのLucky Dayeは、厳格なキリスト教の教会で育ちました。過激派の宗派だったそうで、音楽やテレビなどの世俗的な楽しみは禁止されていたといいます。

「多くのものを見ることが出来ず、多くのものすることができなかった」okayplayer

この経験を残酷なものだと考えつつも、おかげで「もっと知りたい」「もっとやりたい」と思うようになったとも語っています。

「僕の原動力となったのは、何も知らないということだった。」Billboard

「子供の頃、あるものを聞く許可が得られなかったことで、より多くのものを聞くようになったんだ。濡れた絵の具には触るなと言われますが、触ってみたいと思うよね。」Billboard

自身の歌声を活かした活動を始める

教会の賛美歌や童謡だけに囲まていたLucky Dayeの歌声は、中学の頃に一歩外へ。学校の女の子に歌を歌って、その声を小遣い稼ぎに使うようになったそう。

「僕は自分の声が特別なものだとは思ってなかった。ただ、それで食べていけることは知っていたから、それを道具として使い始めたんだ」VICE

2005年の上半期には、全米規模のオーディション番組「アメリカン・アイドル」のシーズン4にDavid Brownの名前で出演。Stevie Wonderの「All is Fair in Love」などを歌い、いくつかのラウンドを通過したことで注目を集めました。

American Idol Season 4 – David Brown

しがらみからの脱出。そして波乱が彼を襲う

「アメリカン・アイドル」で注目を集めた2005の夏、ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを襲いました。1,800人以上が亡くなり、13万4,000棟の家屋が倒壊という甚大な被害を招いた大規模な災害でした。

デイの家族はテキサス州タイラーへ引っ越しを余儀なくされたそうです。そして同じ頃、デイは自身の家柄が持つ宗教との関係を見直したいと考えていました。

「自分の人生の道は教壇に向かって歌うことではない」

と考えた彼は礼拝の際に、

「悪魔が『神は、これは私の道ではない、もっと大きな目的があると言った。私はここで歌うべきではない』と言われた」Billboard

と参列者に語ったそうです。これを機に、信者である家族との関係はギクシャクしていったそう。

宗教との関係を見直し、家族との関係が不穏だったデイはその後一人暮らしを決意。アトランタに移住し、ソロ・アーティストとしての活動を始めます。(ちなみに現在では家族との関係は良好だそうです[R])

「ひとりぼっちにされたような気がしたよ。だから僕は、”ちょっと浸ってみようかな”と思ったんだ。音楽をやりたいと思っていたけど、ここではできないと思っていた。」Billboard

家族と孤立した経験は、彼の音楽活動をさらに集中させるきっかけとなりました。その後はさらなるチャンスを求め、アトランタからロサンゼルスへ渡ります。

しかし、LAに移住後も波乱は続き、知らない取引に巻き込まれてお金も失ってしまったそうです。

「友達もお金も希望もないところまで来てしまったよ」VICE

過去との決別。そして成功の階段へ

David Brown(デヴィッド・ブラウン)の名で活動していた彼はより良き人生を求め、辛い過去との決別をするため、ステージネームをLucky Daye(ラッキー・デイ)へと改名。名前の語尾である「e」には、敬虔なクリスチャンの家族と複雑な関係性にあった伝説的な歌手Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)へのオマージュが込められているそうです。

デイはロサンゼルスで、アトランタ時代に知り合っていたDJ CamperとD’Mileという2人のプロデューサーと再開。ここからチャンスが訪れます。

D’Mileは7カ月もの間、デイのサウンドを洗練させるべくスタジオでのセッションを容認し、その結果『Painted』に収録される12曲を作り上げたといいます。

「彼は、僕が何をやってもいいと思わせてくれた唯一のプロデューサーの一人だった。彼は僕が自分自身であることを許してくれたし、そんな風に感じることは僕にとって新しいことなんだ。」Billboard

デイが「D’Mileと最も強い相性を示す」と語る曲「Paint It」

その後は世間の知る通りの活躍を見せ、ソングライターとしての手腕も発揮。メアリー・J・ブライジ、エラ・メイ、トレイ・ソングス、オーガスト・アルシーナ、キアナ・レデ、ケラーニなど、多くの著名アーティストのソングライティングを担当しました。

Lucky Dayeへの音楽的影響

デイは厳しい制約のあったキリスト教宗派の家庭で育ったため、音楽の影響は一般的な家庭とは違うものでした。それでもニューオーリンズという土地は、彼に音楽的な影響を与えたといいます。

「ニューオーリンズはとても音楽的な場所だよ。外に出れば夕食を食べるためのお金のために、ダンスや歌を披露している人たちがいるんだ」VOGUE

主流な音楽を嗜めなかったデイは、Dr.スース(アメリカの絵本作家)の本を読んでメロディーを独学で学んでいったそうです。

あの本は自然に韻を踏んでいるんだよ。ちょっとした拍子を取るだけでいいんだ。Billboard

また、父親が演奏していたGap Bandの1982年の名曲「Early in the Morning」に魅了され、父の演奏コレクションを楽しみにしていたといいます。

「父はベースのグルーヴがあるものなら何でも演奏していたよ」Billboard

The Gap Band – Early In The Morning

また、個別のアーティストで影響を受けた人物には、

  • ボブ・マーリー
  • マイケル・ジャクソン
  • プリンス
  • リック・ジェームス
  • ローリン・ヒル
  • ホイットニー・ヒューストン
  • Boyz II Men
  • グレース・ジョーンズ

などのレジェンドの名前をあげています。

注目したい二作品

グラミー賞ノミネート作『Painted』

2019年5月24日にリリースされた、Lucky Dayeを大きく飛躍させた作品。第62回グラミー賞では「最優秀R&Bアルバム」にもノミネートされました。

それまでリリースしていたEP『I』、『II』を経て、新曲の3曲や「Love You Too Much」などを収録した、当時の集大成ともいえる作品です。

このアルバムは、10代の恋愛、過去の心の痛み、現在の恋の悩みなど、彼の考えを深く掘り下げています。様々な形で愛の表現をしており、彼の純粋な気持ちが反映された作品でもあります。

「舌の先にあったんだ」okayplayer

このアルバムのソングライティングは、彼にとって簡単に出来たものだそうで、いかに彼の人生が反映された作品なのかが分かります。

女性に光を当てるコンセプティブ作品『Table for Two』

2021年2月12日リリース。Yebba、Tiana Major9、Mahalia、Ari Lennox、Queen Naija、Joyce Wriceという輝かしい6名のシンガーをゲストに迎えた作品です。

2019年の12月にAri Lennoxと一緒に楽曲「Access Denied」を作ったのが始まりで、マーヴィン・ゲイの『Marvin Gaye and His Girls』のようなアルバムを作りたいと思ったことに由来する作品なのだそう。

「マーヴィン・ゲイ以外に女性だけのアルバムを作った人はいないので、いいアイデアだと思ったよ」okayplayer

「全てが女性ゲスト」というこのEP。「女性に光を当てたい」との想いもあるそうです。

女性がチャートを席巻している昨今において、デイは「その燃料を燃やし、後押しするエンジンの一つになりたかった」とも語っています。

「僕が知っている限りでは、最も生々しい声と才能を持った人たちを選んでいます。Yebbaは、今の僕たちの世代で最もソウルフルな声の持ち主だ。Joyce Wriceは、純粋な歌声だね。アリ・レノックスは、エリカ・バドゥのような生々しい声を持っている。さまざまな角度からソウルを表現しているよ。」Schön! Magazine

また、イギリス出身のMahaliaやTiana Major9を作品に入れた理由も興味深い内容でした。

ヨーロッパやロンドンの人々の特徴は、このようなメランコリーな愛を持っていること。とてもムズムズするんだ。アメリカのR&Bはもっとシャープだよね。DJBooth

イギリスの音楽を聴くと、たとえ雨が降っていなくても雨の音が聞こえて来る。だから、あの子達を入れなければならなかったんだ。DJBooth

以上の想いも含めて再度作品を聴いてみると、グッと聞こえ方が変わるんじゃないかなと思います。

最後に

Lucky Dayeを紹介しました。中々に壮絶な人生を歩んできている彼ですが、特に家柄が持つ宗教関係については大変だったようです。ただ彼は、そんな経験に対してポジティブな考えも芽生えて来ているそうです。

最近では、自分の人生において宗教が果たす役割を再定義しており、かつては自分を束縛していたものが、大人になってからは人間関係の指針になっていると言います。VICE

何事もポジティブに捉えるのは難しいですが、「見る角度で答えは変わる」ことを教えてくれる気がしました。

最後までお読み頂いた方、ありがとうございました!

Reference

VOGUE「Lucky Daye on His New E.P. Table for Two, and How He’s Learning to Put Himself First」
FADER「Lucky Daye chooses love in the face of life’s bullshit」
Billboard「Lucky Daye on His Debut Album ‘Painted,’ Learning Melodies Through Dr. Seuss Books & Craving His Mother’s Acceptance」
Genius「Lucky Daye」
HYPEBEAST「Lucky Daye Flips His Deepest Emotions Into Audible Art」
L’ART MAGAZINE「L’ART CATCH UP WITH: LUCKY DAYE」
okayplayer「We spoke with singer Lucky Daye about his career path and how Marvin Gaye inspired his new EP Table For Two.」
Lucky Daye Is Turning His Traumatic Religious Upbringing into Hope
VICE「Lucky Daye Is Turning His Traumatic Religious Upbringing into Hope」
Schön! Magazine「interview | lucky daye」
DJ Booth「Lucky Daye’s Year of Collaborations」

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facebook.com/IAmLuckyDaye1

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