Muni Longの「Made For Me」を考察&解説 / 「あなたしかいない」を純粋に歌ったラブバラード

楽曲「Hrs and Hrs」がグラミー賞の最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞したことも記憶に新しい、フロリダ出身のシンガーソングライターMuni Long(マニー・ロング)。

今回は、彼女が2023年9月にリリースした「Made For Me」の歌詞や和訳を用いながら、曲の内容を考察&解説していきます。

(※本記事は筆者の感想文が含まれます。あくまで考察としてお読みいただければと思います。)

Muni Longの「Made For Me」はどんな曲?

Made For Meは純粋な愛についてを歌ったラブソングです。

「90年代、2000年代のクラシックな要素が詰まっている」とMuni long自身も語っていて、新しくもあり、一方でノスタルジック。「時代を超越した王道バラード」と言っても良いかもしれません。

「”Made For Me”は、90年代と2000年代の愛されたクラシックな魅力をたっぷりと含んだ、美しい懐かしのバラードよ。この曲は純粋に愛についての曲で、それこそが私の真の本質。私は単に愛を感じ、その愛を表現したいんだ。」Muni Long – The Making of “Made For Me”

プロデュースはアッシャーなどを手掛けた凄腕メンツ

「Made For Me」は、Jermaine Dupri(マライやキャリーやアッシャーのプロデュースで有名)、Bryan-Michael Cox(アッシャー、クリスブラウンのプロデュースで有名)らがプロデュースに加わったスペシャルな一曲。Muniは彼らとのコラボレーションを長年望んでいたそうで、彼らとのスタジオでの作業は、彼女にとって特別な経験であったようです。

「JDとBrianは、ポップカルチャーやR&Bポップカルチャーにおいて、もっとも素晴らしいソングライターとプロデューサーの二人なの。彼らと一緒に仕事をすること自体がもう、ワオ、って感じ。この人たちはね、私が成長していく中で見てきた人たちで、彼らの多くの曲を聴いて、彼らの創作物を楽しんできたわ。」Muni Long – The Making of “Made For Me”

JDとBrianからすると「このプロジェクトは俺たちの得意分野だ」と思っていて、制作はスムーズに進んだのだとか。彼らが普段から取り組んでいる音楽スタイルにフィットしていると感じていたそうです。

TikTokのトレンドから着想を得たサウンド作りをした

制作を行う一方で、当時のTikTokではマライア・キャリーの20年前の曲(JDプロデュースであれば「We Belong Together」?)のマッシュアップが流行っていたそうです。
彼らは、このソーシャルメディアでの現象を見逃さず、Muniの新曲に反映させる機会を見出しました。

「もしTikTokでみんながこの曲を楽しんでいるなら、俺たちがこの曲に加えるべきものが何かを正確に理解した」

とひらめきを得たことで、リスナーの反応を意識した楽曲作りに成功したという面白いエピソードもあります。

Muni Longの「Made For Me」の歌詞を深読みする

ヴァース1 / 比喩的に強い切なさを表現

Lyric

The smell of your perfume
(あなたの香水の匂い)
I thought I was immune
(免疫があると思ってたのに)
Lookin’ around this room
(この部屋を見回しても)
Can’t help but see the traces of you
(あなたの痕跡が見えてしまうわ)
This moment is surreal
(この瞬間は非現実的)
I can’t put into words how I feel
(この気持ち、言葉にできないの)

最初のヴァースでは、歌い手が相手の存在の大きさを表現。「香り」や「部屋に残された痕跡」を通じ、感じていることを描写することで、相手との関係が彼女にとってどれほど深く、重要であるかがわかります。

「非現実的」「言葉にできない」と、比喩的ながらも感度が高めなフレーズを使っていることから、切なさが一層伝わってくる部分です。

プレコーラス / パートナー、リスナー、社会との深い繋がり

Lyric

Twin
(ツイン)
Where have you been?
(どこにいたの?)

プレコーラスでは、「Twin」というシンプルな1ワードを使って、相手との深いつながりを表現しています。

Muni自身はこの部分がお気に入りだそう。「Twin」は親密な繋がりを感じた時に、彼女が実際に使う言葉なのだとか。

「私が好きなパートの一つは、ただ一言の”ツイン”という言葉。私たちはいつもこの言葉を使う。誰かと本当に波長が合うと、”やあ、ツイン “っていう感じ。」Muni Long – The Making of “Made For Me”

彼女はこの「Twin」のワードを、SNSでトレンドになっている「TwinFlame(ツインフレーム)*1」という現象や概念と同調している感じがすると述べていて、人間関係の深いつながりや、ソーシャルメディアで流行している現代的な話題との共鳴を感じているのだとか。

ワードはとても短いですが、リスナーからの共感や文化的トレンドとのつながりも垣間見える深い部分だと思います。

*1 TwinFlame(ツインフレーム)

ツインフレームとはスピリチュアリズムの概念で、二人の間に存在する強烈で深い魂の結びつきを指します。ツインフレームは、元々一つだった魂が二つに分かれたとされ、それぞれ異なる人間として生まれ変わりますが、その後、深いレベルで互いに引き寄せられるとされます。単なる人間関係以上のものを意味し、互いの弱点や成長を映し出す鏡のような存在なのだそうです。

コーラス / 「あなたしかいない」を強く表現

Lyric

Nobody knows me like you do (Nobody)
(あなたほどに私を知る人はいない(誰もいない))
Nobody gon’ love me quite like you (Nobody, yeah)
(あなたみたいに愛してくれる人はいない(誰も))
Can’t even deny it, every time I try it
(否定できないわ、試すたびに)
One look in my eyes, you know I’m lyin’, lyin’
(私の目を見れば、嘘をついてるって分かるでしょ、嘘を)
Body to body, skin to skin (I’m never gon’ love like this)
(体と体、肌と肌(こんな風にはもう愛せないわ))
I’m never gon’ love like this again (Again, yeah)
(こんな風には二度と愛せない(またね、ええ))
You were made for me (Just for me)
(あなたは私のために存在してる(私だけのために))
Said you were made for me (Only for me, yeah, yeah)
(あなたは私のためにいるの(私だけの))
Think you were made for me
(あなたは私のためにいると思うの)
Oh yeah, you were made for me
(ああ、本当にあなたは私のためにいるのね)

コーラスでは、相手に対する深い愛と、特別な絆を繰り返し強調。「made for me(私のために)」というタイトル回収をする部分でもあり、自分を本当に理解し、愛してくれるのはあなた(相手)だけだと信じています。

「こんなに深く、こんなに真剣に愛することが、またあるだろうか?」との自問に、「ああ、あなたは私のためにいるのね」と答えを出す、セルフトークの要素もある部分かなと思いました。

運命を感じさせるフレーズも多いので、先ほどのプレコーラスで紹介した「Twin」の文脈で考えてもグッと来る部分です。

ヴァース2 / 愛の強さが故の不安

Lyric

It ain’t every day
(毎日じゃないの)
That I get in my feelings this way
(こんな風に感情的になるのは)
I knew it was rare
(珍しいことだと知っていたわ)
‘Cause before you, I never did care
(あなたがいる前は、気にも留めなかったの)
Don’t know what I would do
(何をすればいいのか分からない)
If I had to go on without you
(あなたなしで生きていくなんて)

二番目のヴァースでは、「こんな感情的になることは珍しい」と歌っています。相手が彼女にとって非常に特別で、以前は他の誰に対してもこんな感情を抱いたことがなかったことを描写。コーラスで歌う想いや、雰囲気を紡いでいますね。

ただ、コーラスと違うなと思ったのは、最後の一文、

「If I had to go on without you(あなたなしで生きていくなんて)」

の部分。

相手なしで生きていくことの難しさ、苦しさのようなものを吐露していることから、愛の強さが故のネガティブな思考も纏ってしまっている描写が描かれています。

アウトロ

Lyric

Made for me
(私のために存在してる)
Made for me
(私のために)
Made for me
(私のためにね)
Just for me, mm
(ただ私のために、うん)

アウトロでは、「Made for me」のフレーズが繰り返され、この歌全体の中心的なメッセージを強調しています。相手との絆の深さと、関係の独自性を囁きます。

終わりに

この曲がクラシックなバラードであることは本人も言っていた通りですが、同時に現代の感性を取り入れて、SNSのトレンドを反映させた制作過程があったのは、めちゃくちゃ面白いなと思いました。

Muni Long作品では、「Hrs & Hrs」の考察記事もあるので、興味のある方は是非。

関連記事:Muni Long – 「Hrs & Hrs」歌詞を考察&解説 / パートナーとの親密な時間を歌ったラブソング

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