最新R&Bを軸にしたプレイリスト「Take It Easy」Vol.55

Spotify、Apple Musicで公開しているR&Bを軸にしたレイドバックミュージックプレイリスト「Take It Easy」更新お知らせ記事です。プレイリストの中から10曲をピックアップし、アーティストや曲についての紹介をします。

プレイリストはこちら。更新の度に内容が変わるので「いいね」で常にチェックしてもらえると嬉しいです。

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10 Picks Song

1.Mariah the Scientist – 「Burning Blue」


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アトランタ出身のシンガー、Mariah the Scientistの楽曲「Burning Blue」。

一聴するに、切ない雰囲気から失恋ソングのようにも感じますが、その実、一度は恋に心を閉ざした主人公が、特別な相手のために再び心を開く決意を歌ったラブソングです。

I got that blue fever
Cold as ice ‘til you came near
You’re like another fire-breathing creature
But it don’t burn how it appears
It’s true you could make me melt
But don’t you forget it if the person you fell for ever do, freezes
It’s only because you ain’t here

Lyric

私の中にあるのはブルーの熱
氷みたいに冷たかった、あなたが近づくまでは
あなたは火を吐く生き物みたい
でも見た目ほどには燃やさない
本当は、あなたなら私を溶かせる
だけど覚えておいて──もし私が急に冷たくなったら
それはただ、あなたがそばにいないから

歌詞で描かれるのは、ただ尽くすだけではない、複雑な愛情の形。「あなたに全てを捧げる」という献身的な一面を見せる一方で、「もし裏切れば容赦しない」という強い意志も隠しません。この脆さと強さが同居した主人公の姿は、非常に人間味に溢れています。

As long as you’re a true (True) leader (Leader)
Then I’ll oblige, promise to please ya (Please ya)
But if you open fire, then it’s treason
And I decide to go out swinging
If you shoot, then you can bet
Every single dollar and your last few cents
That I will too, and I mean it
Tell me, where do we go from here?

Lyric

あなたが本物のリーダーでいてくれるなら
私は従うわ、あなたを喜ばせるって約束する
でももし私に銃を向けたら、それは裏切り
私は最後まで戦って終わる
あなたが撃つなら、賭けてもいい
一ドル残らず、最後の小銭までもね
私も同じように撃ち返す。本気で言ってる
ねぇ、この先、私たちはどこへ行くの?

ちなみに、この「Burning Blue」、あるリスナーは「青は安全や安心を象徴する色」として捉え、「青い炎」を危険ではなく「守られた炎」のイメージに結びつけた解釈も寄せられているそうですが、それも彼女が意図したものではないとのこと。

ただし、「自分が無意識に持っていた知識が、そういった深読みできる表現に繋がったのかも」とも語っており、リスナーがそれぞれ自由に解釈することを本人は歓迎モードの様子です。

深掘り記事があるので、もっと知りたいというかたはこちらをぜひ。

関連記事:Mariah the Scientistの「Burning Blue」を考察&解説 / 氷の心を溶かす青い炎

2.Echo Huang – 「SAY SOMETHING」


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アジア系アメリカ人のインディペンデントアーティスト、Echo Huang(エコー・ファン)。彼女が2025年6月にリリースしたEP『you make me feel…』に収録されている「SAY SOMETHING」は、心地よいサウンドとは裏腹に、心がすれ違う関係の痛みを歌った一曲です。

「曲自体のメッセージはすごくシンプル。私が以前経験した、ちょっと曖昧な関係について歌っているの。」Tiktok

Daniel Caesarなどからも影響を受けているという彼女の音楽は、ソウルフルで滑らかなオルタナティブR&B。何より魅力的なのは、リスナーから「天使のようだ」と評される透き通った歌声だと思います。

この曲で描かれるのは、満たされない関係の中で、相手からの正直な言葉や感情を切に願う主人公の姿です。

Baby, Won’t you say something?
I need you to say something something something.
Baby, want to feel something?
I need you to feel something Something something.

Lyric

ねえ、何か言ってくれない?
あなたに何かを言ってほしい 何かを、何かを
ねぇ、何か感じてみてよ?
あなたの心を、何か私に向けてほしい 何かを、何かを

途中には、「am I just the same mistake you made(私はまた同じ過ちなの?)」という歌詞には、自分が相手にとって都合の良い存在なのではないかという、痛々しい疑念も込められています。

相手に合わせて自分を変えたのに裏切られてしまった悲しみなど、リアルな感情の描写が印象的です。

3.Syd – 「Die For This」


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The Internetのボーカルとしても知られるSyd(シド)が、約3年ぶりとなるソロシングル「Die For This」をリリース。

今後のEPからの先行リリースとなる本曲は、大切な人のためなら全てをリスクに晒しても構わないという、どこまでも献身的で揺るぎない愛情を歌います。

Die for this
If you sellin’ love, then girl I’m buyin’ it
I don’t even wanna put a price on this
You won’t recognize me when I commit
I promise, I’ma
Tell it to the world, I don’t mind
I can be your girl, you’ll be mine
Tryna be the time of your life
We can have forever tonight

Lyric

これに命を懸ける
もしあなたが愛を売ってるなら、全部買い取るわ
値段なんてつけられない
本気になった私を、きっと見違える
誓うわ
世界中に言いふらしてもいい
私があなたの彼女になって、あなたは私のもの
あなたの人生で最高の瞬間になりたい
永遠を、今夜に詰め込もう

歌詞から感じるのは、少し大げさだと感じるほどのストレートさ。タイトルにある「Die For This(これに命を懸ける)」という印象的なフレーズを何度も繰り返しながらも、「もしあなたが愛を売ってるなら、全部買い取るわ」など、ユニークな言葉選びでも感情を表現しています。

サウンドは、Sydの少しスモーキーで滑らかな歌声を最大限に活かす、ミニマルで洗練されたプロダクション。静かな始まりから、徐々にジャジーなベースやシンセが加わり、曲の世界が豊かになっていく展開がとても心地よいです。

親密なムードを持つR&Bでありながら、同時に優しく心地よいサマージャムでもある本曲。Sydの持ち味である柔らかなボーカルと、それを引き立てる繊細なトラックが見事に融合した、彼女の確かなカムバックを示す一曲だと思います。

関連記事:Syd(シド)とは / ハウススタジオから始まった音楽的道のり

関連記事:5つの個性が集結するバンド「The Internet(ジ・インターネット)」の魅力

4.JID – 「No Boo(with Jessie Reyez)」


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JIDの最新アルバム『God Does Like Ugly』に収録されている「No Boo」。カナダ出身のシンガーソングライター、ジェシー・レイエズを客演に迎えた一曲で、JIDの代名詞である巧みなラップとは一線を画す、スムーズなR&Bサウンドが印象的です。

この曲の舞台は、高級日本食レストラン「Nobu」。そこで繰り広げられる男女のぎこちなく、痛々しいほどリアルな会話劇が描かれています。

Why’d I take you to Nobu just to hear ‘bout your old boo?
Boy, I’m not the shoulder to cry ongenius

Lyric

なんでわざわざノブに連れてって、元カノの話聞かされなきゃいけないの?
ねえ、私はあんたの泣きつく肩じゃない

ジェシーが演じる女性は、目の前の男性が過去の恋愛話ばかりすることにうんざりしています。タイトルの「No Boo」は、レストランの名前「Nobu」と、「恋人じゃない(No Boo)」をかけた巧みな言葉遊び。この時点で二人の間には、埋めがたい心の距離がある(?)ことが感じられます。

対するJIDが演じる男性は、悪びれる様子もなく、自身の問題を吐露します。

Uh, now, with all due respect, ma
But I’m not the one who sent the text now, look
I’m not the only one who’s talkin’ ‘bout their ex now, love
I got a stain, I’ve tried abstainin’ from the sex, I bust
Pushin’ your buttons, no keys, she might just lease me the pussy
At the least, I think shе’d probably find an athlete
Actually, after mе, it’s nothin’ but a catastrophegenius

Lyric

まあ、リスペクトはするけどな、ベイビー
送ったのは俺じゃないって、ちゃんと見ろよ
元恋人の話してんの、俺だけじゃないだろ?
禁欲しようとしたけど、結局我慢できずにやっちまった
お前のツボをちょっと突けば、あっさり心も体も開く
最低でも次はスポーツ選手でも捕まえるんじゃね?
でも俺の後じゃ、全部が破滅にしかならねえけど

彼は性的な欲求を抑えられない虚しさを語り、目の前の女性に対して精神的な繋がりを求めていると打ち明けます。

しかし、その言葉とは裏腹に、彼の態度は大きく、どこか空虚で、本心が見えにくい感じ。お互いに惹かれ合っている部分もあるのに、どうしても素直になれないもどかしさが、その後のサビやスペイン語で歌われるアウトロでも表現されています。

「黙って、今を台無しにしないで」「なんで愛を探すのを怖がるの?」といったフレーズがあるのですが、これは心の奥底で通じ合いたいと願う二人の本音なのかもしれません。

単なる痴話喧嘩にも聞こえるし、素直になれない生々しい雰囲気、不快感、みたいな部分でとてもリアリティのある曲だと感じました。

5.Jenevieve – 「Flight Risk」


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マイアミ出身でキューバとバハマにルーツを持つシンガーソングライター、Jenevieve(ジェネヴィーヴ)。彼女の待望のニューアルバム『CRYSALIS』に収録されている「Flight Risk」は、現代社会のプレッシャーに対して、あえて見せる強気な態度と、その内側に秘められた自己防衛の本能を見事に描き出した曲です。

ジェネヴィーヴといえば、90年代R&B/ネオソウルを彷彿とさせる心地よさと、ドリーミーなメロディックR&Bな雰囲気が特徴ですが、本曲ももれなくソウルフルで、メロディックさを帯びています。

タイトルの「Flight Risk」とは、直訳すると「逃亡の恐れがある人」という意味。その名の通り、歌詞では「Might dip, I’m a flight risk(すぐに消えちゃうかもね、私、捕まらない女だから)」というフレーズが印象的に繰り返されます。

Don’t mess with my ice game unless you want trouble
If you throw a fit, bitch, yeah, I got a muzzlegenius

Lyric

私のクールな流儀に口出すなら、痛い目みるよ
駄々こねるなら、黙らせちゃうから

コーラスで歌われる挑発的な言葉は、一見すると攻撃的。ですが、これは無闇に他者を威嚇しているのではなく、有害なものから自分を守るための警告のようにも感じられます。

さらにヴァース2の歌詞を読み解くと、彼女の繊細な内面が見えてきます。

Bubblegoose, bulletproof
Tinted frames, baby, walk the line
Suspicious minds can’t contain
Maybe fame isn’t worth the time
Ah, ah, ah, ah (Oh, yeah)
Give your enemies enough slack and they’ll hang themselves
Off the pedestal they sit on while they play themselves
Cruel world, baby
It’s a toxic place
Let’s hit the new world waters
Sippin’ on that watergenius

Lyric

ダウンコートに守られて、まるで防弾仕様
色つきのサングラス越しに、ギリギリの道を歩く
疑り深い心は抑えきれない
有名になる価値なんて、本当は微妙かも
Ah, ah, ah, ah
敵には好きにやらせとけばいい、勝手に自滅するから
自分の台座の上で、自分を演じてるうちに落ちていくの
冷たい世界よ Baby
ここは毒だらけ
だから新しい海へ漕ぎ出そう
澄んだ水を飲みながらね

外部からの評価や名声に対する不信感、そして「毒だらけ」の世界から抜け出したいという切実な願いが見受けられます。

これは単なる逃避ではなく、自分らしさを守るための積極的な選択。直接的な対決を避け、「敵には好きにやらせとけばいい、勝手に自滅するから」と歌う部分には、冷静に状況を見極めるしなやかな強さも感じさせます。

有害な環境や人間関係からは、いつでも逃げ出して良いというサバイバル術が、心地よいビートの上でクールに歌われています。

関連記事:「Baby Powder」で一躍有名になったメロディアスなシンガーJenevieveを紹介

関連記事:Jenevieveの「Head Over Heels」を考察&解説 / 自らの魅力を自覚した小悪魔ラブソング

6.Vedo – 「Thinkin About You」


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アトランタを拠点に活動するR&Bシンガー、Vedo(ヴィド)が2025年7月25日にリリースしたアルバム『e•pit•o•me』。その収録曲である「Thinkin About You」。

この曲の魅力は、何と言ってもそのサウンドで、流れるようにスムーズなトラックは、90〜,00年代初頭のR&Bを彷彿とさせます。派手な装飾を排したミニマルなビートの上で、Vedoの甘く伸びやかな歌声が際立つ構成は、王道のR&Bを求める方の心を掴むと思います。

Girl, I’ve been thinking about you (Yeah)
Something about you
On every occasion, there’s not a day
That I’m not thinking about yougenius

Lyric

ずっと君のこと考えてる
君には何か特別なものがある
どんな時でも、一日たりとも
君を想わない日はないんだ

歌われるのは、複雑な駆け引きやドラマとは無縁の、どこまでもストレートな愛情。朝から晩まで、ただひたすらに愛しい人のことを考えてしまう、といった純粋な想いが綴られています。

このシンプルさと混じり気のない愛情表現は、現代ではかえって新鮮に響くし、どこか安心感を与えてくれます。Vedo自身が語る「質の高いR&Bを出し続けること」へのこだわり[R]は、この極上のスムース・チューンでももれなく結実している、そんな風にも感じた一曲です。

7.Ama Louise – 「Hindsight」


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UK R&Bシーンで注目を集めるノースロンドン出身のシンガーソングライター、Ama Louise(アマ・ルイーズ)。来るデビューE.P.からの先行シングルとしてリリースされたのが、この「Hindsight」です。

失ってから初めてその大切さに気づく、痛いほどの後悔と元恋人への消えない愛情を歌った、ソウルフルな一曲。Ama Louiseのメロウで感情豊かなボーカルが際立つスムースR&Bです。彼女の歌声は、どこか切なさを纏いながらも、心にすっと寄り添ってくれるような温かみを感じさせます。

Should be over you by now but nothing’s working
Guess I’m stuck on you
I swear that you’re my person
Got a feeling it’s not over
Truth is that I want you to be closerHindsight (Official Visualiser)

Lyric

もうとっくに忘れてるはずなのに、全然できない
やっぱり私はあなたに縛られてる
あなたが運命の人だって信じてるし
これで終わりじゃないって直感してる
本当は、もっと近くにいてほしいの

歌われるのは、一度は離れることを選んだ相手への、断ち切れない想い。「もう忘れてるはずなのに、全然できない」「あなたが運命の人だって信じてる」と、時間が経つほどに相手の存在の大きさに気づいてしまった主人公の心情が伝わってきます。

Lemme make this black & white.
Only you can get me high
Butterflies cloud9
It’s obvious in hindsight.
Need you back on my side.
Don’t want to do this on my own.
Cos’ I got tunnel vision you
I’m missing too far from home.
So let me make this black and white. white, now
I got 20/20 hindsightHindsight (Official Visualiser)

Lyric

はっきりさせたいの、白か黒か
私を舞い上がらせるのはあなただけ
胸の高鳴り、雲の上みたいな気分
振り返れば明らかよ
あなたがまたそばに必要なの
ひとりでなんてやっていけない
私はあなたしか見えてなくて
あなたがいないと、心は帰る場所をなくすの
だから今はっきりさせたい、白黒つけたいの
振り返れば全部見える、20/20の視界で

タイトルの「Hindsight」とは、日本語で「後知恵」や「振り返っての判断」を意味する言葉。「It’s obvious in hindsight(振り返れば明らかよ)」というサビの一節は、まさにこの曲の核心を突くフレーズと言えそうです。

ちなみに20/20の視界というのは、「視力が完璧(両眼とも1.0~1.2相当で矯正不要)」という意味だそう。

8.Destiny Briona – 「sweet nothings」


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アトランタ出身のR&Bシンガー、Destiny Briona(ディスティニー・ブリオナ)の楽曲「sweet nothings」。彼女のプロジェクト『i’m not crying, u are』に収録されているこの曲は、テキサス州ダラス/フォートワース出身のシンガーソングライターDee Gattiをフィーチャーした、深くエモーショナルな世界観が広がります。

サウンドは、重厚感のあるスローテンポなR&B。少しダークで静かな雰囲気の中に、芯のあるビートが響くのが印象的です。

この曲で歌われるのは、相手への忠誠心を信じられない一方で、身体的には深く求め合ってしまうという、どうしようもなくアンビバレントな関係性です。

Whisper sweet nothings in my ear while we mess up the bed
The TV binge watching us like a marathon
I slowly ride it
Tell me it’s mineShazam

Lyric

甘い言葉を耳元で囁きながらシーツをぐちゃぐちゃにして
まるでマラソンみたいに、テレビが私たちを映してる
私はゆっくりと乗りこなす
「これはお前のものだ」って言って

コーラスでは、情熱的な夜の光景が目に浮かぶようですが、歌い手は最初のヴァースで「Know you lack loyalty(忠誠心なんて全然ないくせに)」と、相手の本質を見抜いています。

その言葉が偽り(sweet nothings)だと理解していながら、それでも「お前のものだ」と肯定される瞬間を夢見てしまう。と、抗えない欲求と諦めが入り混じった感情に、人間味を感じます。

痛みが共存する、リアリティと共感性を持ったR&Bです。

9.Chance the Rapper – 「Just A Drop (feat. Jay Electronica)」


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Chance the Rapperのアルバム『Star Line』に収録された一曲。Jay Electronicaを客演に迎え、ソウルフルでゴスペルライクなサウンドに乗せて、現代社会に根深く存在する「渇き」と、それに対する切実な「祈り」を力強く描き出します。

Chanceは冒頭から、「水」と「土地」という、人間が生きていく上で不可欠なものをテーマに、富める者と持たざる者の圧倒的な格差を鮮烈に表現。

We need just enough water to bathe in
Just enough water to cook with
They got enough water to play in
They got enough water to swim ingenius

Lyric

風呂に入る分だけの水が欲しい
料理に使える分だけの水が欲しい
あいつらは遊ぶための水を持ってる
泳ぐための水を持ってる

自分たちが必要とするのは、入浴や料理といった生命維持のための最低限の水。

それに対して”あいつら”は、遊びや観賞用の噴水、果てはサーモンを泳がせるためだけの水を潤沢に所有しているという痛烈な対比は、続く「土地」をテーマにしたヴァース2でも繰り返されます。

単なる不満の表明ではなく、社会の構造的な不平等を告発しているようです。

この曲の核心は単なる社会批評に留まらないところ。コーラスで繰り返し歌われるのは、印象的なこの一節です。

I don’t need a flood, don’t need a tub (Yeah)
Don’t need a cup, just a drop of the blood, oh
I’ve seen the storm come (Storms come)
I’ve seen the warnings
I know He’s coming, I can’t wait till He does, oh
genius

Lyric

大洪水なんていらない、浴槽もいらない
コップもいらない、血の一滴があればいい
嵐が来るのを見た
警告のサインも見た
彼が来るのを知ってる、待ちきれないんだ

ここでは、旧約聖書の大洪水のような世界の破壊(罰)ではなく、イエス・キリストが流した「一滴の血」による救済への渇望。物理的な水や富を求める声の奥で、彼の魂が本当に求めているのは、神による根源的な救いであることが示唆されます。

嵐の到来を予感しながら「彼が来るのを待ちきれない」と歌う姿は、終末論的な世界観の中で、確かな信仰を支えに希望を見出そうとする意志の表れだと感じます。

Jay Electronicaのヴァースでは宗教的な理由で論争もあるようなので、タイミングがあれば考察記事を書こうと思います。

いずれにせよ、社会風刺から、最後には信仰をめぐる現代的な論争にまで接続する本曲。希望と危うさを同時に内包した、深い問いを投げかける一曲です。

関連記事:チャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)を紹介 / 経歴からリリースアルバムまで

10.UMI – 「RIGHT/WRONG」


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シアトル生まれ、LAを拠点に活動するシンガーソングライター、UMI。セカンドアルバム『people stories』に収録の「RIGHT/WRONG」。

この曲が描き出すのは、恋愛や人生の選択における「これって正しいのか?間違ってるのか?」という、誰もが一度は抱いたことのある迷いや葛藤。考えすぎてしまい、つい白黒つけたくなってしまう心に、寄り添ってくれるような一曲だと思います。

耳を惹くのは、ローファイで落ち着いた質感のR&Bサウンド。ノスタルジックな雰囲気と、UMIのメロウで温かみのある歌声が絡み合い、ソウルフルで親密な空間を作り出しています。

Oh, is it right when I don’t know what I don’t know?
Would it be wrong if I gotta sit, gotta think this through?
Is it alright that I callеd you back?
Is it wrong that I didn’t hold back?
You hit me right when I need it the mostgenius

Lyric

知らないことを、知らないままでいいのかな?
立ち止まって、ちゃんと考えてもいいのかな?
もう一度あなたに電話しちゃったの、いいかな?
気持ちを抑えきれなかったの、ダメだったかな?
でもあなたは、私が一番必要なときに、ちゃんと響いてくれる

サビで繰り返されるこのフレーズは、まさにこの曲のテーマそのもの。情報が溢れ、常に「正しい答え」を求められるような世の中で、自分の感覚が分からなくなってしまう不安や焦りを表現しているように感じます。UMI自身も自分を「考えすぎ(overthinker)」だと語っており[R]、そんな彼女自身の内面が色濃く反映されているのかもしれません。

この終わりのない問いかけに対し、曲が示してくれるのは意外にもシンプルな答え。UMIが語るに、この曲はフリースタイルで書かれたもので、そこには彼女の母親からの「人生に正しいも間違いもない、ただ心地良いかそうでないかだけ」という言葉が込められているそうです。

「この曲は、母にインスパイアされた、私と私自身の高次の自己との会話について即興的に書かれたものよ」Urban Magazine

「母は、人生には正しいも間違いも存在しない——あるのは”心地よいかどうか”だけだ——と教えてくれることで、私に自分の内なる声を聴く方法を教えてくれました。自分の道に迷いを感じるとき、私は母に導きを求めます。母は決して裁くことなく導いてくれます。それは、私がひとりでいるときに内なる声が私にしてくれるのと同じです。この曲は、そんな母と私との対話のようなものなのです——彼女は私に、自分を信じる方法を教えてくれるのです。”RIGHT WRONG”は、心に従い、そして愛する人々に頼ることを思い出させてくれる楽曲です。」Urban Magazine

この曲にあるのは、「正しさ」という基準に縛られず、もっと自分の心の声に耳を澄ませていいんだ、という温かいメッセージ。無理に答えを出そうとせず、迷っている自分自身をそのまま受け入れることへの肯定のように感じます。

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