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H.E.R. / 匿名でデビューした若きR&Bシンガーの正体

Artists Music R&B

2016年より「匿名のアーティスト」として突如姿を表し、今や代表的なR&Bアーティストとして確固たる地位を築くシンガーH.E.R.。アリシア・キーズ、ブライソン・テイラー、リアーナ、ジャネット・ジャクソンなど大物アーティストからも称賛され、グラミー賞受賞歴も持つ人物です。

今回はH.E.R.のヒットソング紹介とともに、彼女のこれまでの過去を振り返り、深掘りしていきます。

Contents

  1. H.E.R.のヒットソング
    1.Could’ve Been ft. Bryson Tiller
    2.Focus
    3.Slide ft. YG
    4.Damage
    5.Come Through ft. Chris Brown
    6.Daniel Caesar & H.E.R. – Best Part
  2. H.E.R.のこれまでを振り返る
    幼少期から少女時代まで
    メジャーレーベル契約/「H.E.R.」の名前の由来
    H.E.R.として… / 2016-2020の活動
    『Back of My Mind』/心の奥底への探求とR&Bの祝福

プロフィール

名前 H.E.R.(ハー)/ (Having Everything Revealedの略)
本名 Gabriella Sarmiento Wilson(ガブリエラ・サルミエント・ウィルソン)
生年月日 1997年6月27日
出身 カリフォルニア州ベイエリア・ヴァレーホ
主な作品 EP
・『H.E.R. Vol.1』(2016)
・『H.E.R. Vol. 2』(2017)
・『H.E.R. Vol. 2 – The B Sides』(2017)
・『I Used to Know Her: The Prelude』(2018)
・『I Used to Know Her: Part 2』(2018)
Compilation ALBUM
・『H.E.R.』(2017)
・『I Used to Know Her』(2019)
ALBUM
・『Back of My Mind』(2021)

H.E.R.(ハー)は、カリフォルニア州ヴァレーホ出身のシンガーソングライター/マルチインストゥルメンタリスト。深みのある絶対的な歌唱力を持ち、脆弱なバラードやプロテストソングなど、数多くのリリカルな名曲で人々の支持を得てきました。

2016年より「匿名性を持つアーティスト」としてデビュー以降、アリシア・キーズ、ブライソン・テイラー、リアーナ、ジャネット・ジャクソンなどの支持・称賛を獲得。リリースしたEPをコンパイルしたアルバム『H.E.R.(2017)』、『I Used to Know Her(2019)』は大ヒットし、10を数えるグラミー賞へのノミネートを含む「ベストR&Bパフォーマンス賞」「ベストR&Bアルバム賞」を受賞しました。

2020年、警察の横暴に反対するプロテストソング「I Can’t Breathe」にて、グラミー賞の「ソング・オブ・ザ・イヤー」を、2021年2月には映画『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア/Judas and The Black Messiah(原題)』の「Fight for You」ではアカデミー賞の「オリジナル曲賞」を受賞。

2021年6月には初のオリジナルアルバム『Back of My Mind』をリリースし、R&Bアイコンとして業界を代表する一人となっています。

H.E.R.のヒットソング

1.Could’ve Been ft. Bryson Tiller

リリース:2018年8月3日
収録作品:『I Used to Know Her』

H.E.RのEP『I Used To Know Her: Prelude』の4曲目に収録。ケンタッキー州ルイビル出身のシンガーBryson Tillerをフィーチャーした曲で、第62回グラミー賞「ベストR&Bソング賞」、「ベストR&Bパフォーマンス賞」にノミネートされ、RIAAの2×プラチナを獲得した曲です。バラク・オバマ前大統領の2018年のベスト・トラックの一つにも選ばれています。

恋愛の可能性についての歌で、「あのままいったらどうなったのか」「どんな未来が待っていたのか」と男女の視点から、エモーショナルな雰囲気で語られている歌です。

2.Focus

リリース:2016年9月8日
収録作品:『H.E.R. Vol.1』

H.E.R.と名乗り始めた最初の作品『H.E.R. Vol.1』に収録。携帯電話に夢中なパートナーの興味を惹きたい乙女心を歌った曲です。リリックは、プロデューサーのDJ Camperのトラックを聴いた第一印象から着想を得て作ったのだそうです。

「DJ Camperが作ったトラックを聴いたとき、彼が選んだ音に脆さを感じたんだ。私にはそのコードが訴えかけているように聞こえた。私たちが経験したことのある、「構ってもらえない」という状況について考え始めたの。彼氏に携帯電話を置いてほしいと思う。「ちょっとだけ私を見て」とか、「彼女を見ないで私を見て」と思っているんだ。」Interview Magazine

この曲をバックミュージックに、リアーナがインスタグラムにポストした動画も話題になりました。H.E.R.は「映像の中の彼女はとてもゴージャス。彼女の髪に吹き付ける風は完璧よ。」と感慨深く語っています。

3.Slide ft. YG

リリース:2019年9月27日
収録作品:『Back of My Mind』

デビューアルバム『Back of My Mind』に収録。ロサンゼルス・コンプトン出身のラッパーYGとのコラボソングです。

「slide」という言葉は、彼女の出身地サンフランシスコ・ベイエリアでは、「when are we going?」や「where are we going?」を意味するスラングだそう。(「どうする?」「何する?」「どこいく?」みたいなワクワク感のある意味で使われているっぽいです。)

「ベイの人々はいつも「I’m finna slide」と言っているわ。今この瞬間を大切にしようという気持ちが込められているのよ。」genius

今を楽しむ気持ちが、MVや曲のフレッシュさからも感じとれますよね。『Back of My Mind』の中でも特にヒップホップライクな一曲です。

4.Damage

リリース:2020年10月21日
収録作品:『Back of My Mind』

デビューアルバム『Back of My Mind』からのセカンドシングル。Herb Alpertの1987年のヒット曲「Making Love in the Rain」をサンプリングしたこの曲は、大切な人があなたのことを「当たり前の存在」と思ったとき起こる「ダメージ」について歌った歌です。

この曲のプロデューサーであるCardiakやH.E.R.本人もHerb Alpert(「Making Love in the Rain」をプロデュースしたJimmy JamとTerry Lewisも含め)のファンだそう。「故きを温ねて新しきを知る」が実現している一曲です。

2022年には、第64回グラミー賞の「ベストR&Bソング賞」と「ベストR&Bパフォーマンス賞」にもノミネートされた他、RIAAからダブルプラチナ認定も受けています。

Herb Alpert – Making Love In The Rain

5.Come Through ft. Chris Brown

リリース:2021年4月23日
収録作品:『Back of My Mind』

大人気シンガーChris Brownとのデュエット曲。2018年の「Focus (Remix)」、2019年の「Come Together」に続く二人のコラボレーションです。

深夜に密会しようとする男女の想いが交わされた曲で、「今のパートナー」と「密会したい相手」との関係についての心の内を囁く歌です。

アルバムテーマである「Back of My Mind(心の奥底)」を反映した曲ですね。

6.Daniel Caesar & H.E.R. – Best Part

リリース:2017年8月25日
収録作品:『H.E.R.』/Daniel Caesar『Freudian』

カナダのシンガーDaniel Caesar(ダニエル・シーザー)とのコラボソング。第61回グラミー賞「ベストR&Bパフォーマンス賞」を受賞した曲であり、H.E.R.が携わる曲の中でも一番有名であると言える曲でしょう。

ダニエル・シーザーとは、RCA(H.E.R.の所属レーベル)の友人であるトゥンジという人物の紹介で出会ったそう。セッションする気は無かったものの、お互いのために演奏し、会話をし、メロディーを行き来させたことで生まれた曲だそうです。

「ダニエルとあの曲を作ったとき、実は私は別の作曲セッションをしていたんだ。当時一緒に仕事をしていた人が早く帰ってしまい、私がまだスタジオで仕事をしている時にダニエルが入ってきたのよ。お互いにレコードをかけながら、何時間も話していた。私たちはただギターを手に取り、ジャムを始めたんだ。」Music Industry Quarterly

「ベストパート」という文字通り、最高のパートナーについて歌った歌で、さまざまな比喩を用いながら「お互いが必要不可欠だ」という愛を表現した曲です。

タイニーデスクコンサートでのパフォーマンスも最高なので、あわせて是非。

Daniel Caesar: NPR Music Tiny Desk Concert

関連記事:質感のある歌声を持つカナダのシンガー「Daniel Caesar(ダニエルシーザー)」を紹介
関連記事:NPR Music タイニーデスクコンサートのススメ【15選】

H.E.R.のこれまでを振り返る

幼少期から少女時代まで

音楽が好きな両親の元で育つ/黒人とフィリピンの文化を受け継ぐ

H.E.R.はカリフォルニア州ヴァレーホで、フィリピン人の母と、黒人の父親の間に生まれました。

母親はカラオケ好きで、よくパーティでも一緒に歌っていたそうです。そんな母の影響で小さな頃からバラードを好んでいたそうで、ホイットニー・ヒューストンやマライヤ・キャリー、アリシア・キーズなどをよく歌っていたのだとか。

父親はカバーバンドをやっていて、週末になるとリビングルームに置いてある楽器で演奏していたそうです。父のバンドでは度々一緒に演奏し、ブルースを教わったのだとか。ジェームス・ブラウン、ジミ・ヘンドリックス、プリンス、レニー・クラビッツ、エリック・クラプトン、AC/DCなどの音楽をよく聴かせてくれたそうです。家族ぐるみで音楽を嗜んでいたのがわかりますね。

「私の両親は私が音楽をやって、好きなことをやって、歌ったり演奏したりできるように、あらゆる機会を見つけてくれたんだ。」GLAMOUR

「私は2つのブレンドとして自分の声を見つけた。私は父の文化から多くを学び、母の文化からも多くを学んだんだ。どちらも私を受け入れてくれたので、本当に感謝しているわ。」GMA News

フィリピンの文化と黒人の文化の素晴らしさや愛を受けて育ったH.E.R.ですが、一方でハーフであることを理由に「周りに馴染めない」と感じたこともあったそう。

「母親とスーパーに買い物に行ったとき、「あれがあなたのお母さん?彼女の髪はストレートで、あなたの髪はカールしているわね」って。」GLAMOUR

人種における葛藤もあった彼女ですが、幼少期の多くを過ごしたベイエリア(カリフォルニアのサンフランシスコやオークランド付近の都市のあたり)は、多様性のある地域だったといいます。

「ベイエリアは多様性に富んでいて、1つのタイプの人や1つの表現方法を見るだけじゃなかったわ。アーティストがたくさんいて、美容に関しても、みんな自分のスタイルを持っていて、制限されることはなかった。それはとても幸せなことだったよ。」allure

作詞は5歳から/驚愕の歌唱力を既に持っていた少女時代

わずか5歳で詩を描き始めたH.E.R.は、6歳で歌を覚え始め、7、8歳のころには音楽そのものについての曲を書いていたそうです。

「曲がだんだん個人的な日記のようになっていった」という彼女は、10歳のとき「両親のような人たちが、私のビジネスにおせっかいを焼いている」という内容のギターソング「Curious」を書いたのを覚えているのだとか。

同じ年齢の頃、アポロシアターでのパフォーマンスや、『The Today Show(アメリカNBCで放送されている朝のニュース番組)』で Alicia Keysの「No One」を歌ったのも話題になっています。

Gabi Wilson (H.E.R.) age 10 on the Today Show performing Alicia Keys

歌上手すぎてビビります。The Today Showのキャスターのホダ・コトブからは、「彼女の年齢の3倍のパフォーマーの豊かでソウルフルな声を持っている」と称賛されたそうです。

10 Year Old H.E.R. (Gabi Wilson) – Showtime at the Apollo

その他『The View』、『The Maury Povich Show』、『Good Morning America』などの番組にも呼ばれ、パフォーマンスを行ったH.E.R.。

12歳の頃には、「Radio Disney’sNext Big Thing(ラジオ・ディズニー主催の『アメリカン・アイドル』のようなラジオ番組コンテスト)」の全米トップ3の投票権を獲得。

これらの活躍をきっかけに、彼女はアリシ・アキーズ本人との関係も深めていくこととなります。

「私の妹を愛している @ガビウィルソン
「jungle」のカバー!!!彼女は歌も演奏も作曲もできるんだ!!!!ママに祝福を!!」Twitter

メジャーレーベル契約/「H.E.R.」の名前の由来

H.E.R.は14歳のとき、尊敬するアリシア・キーズなどが所属する音楽レーベル「RCA Records」と契約します。当時は「Gabi Wilson」という名前で活動していて、「Something to Prove」という楽曲をリリースしています。

Gabi Wilson – Something to Prove

その二年後、EP『H.E.R. Vol.1』をリリースしたとき、彼女は「Gabi Wilson」から「H.E.R.」へと名前を変え、匿名性の高いアーティストとして再登場しました。

「H.E.R.」は「Having Everything Revealed」の略

「H.E.R.」という名前は「Having Everything Revealed」の略で、「すべてを明らかにする」という意味を持ちます。本名である「Gabi Wilson」ではなく「H.E.R.」としたのは「見た目・年齢・出身地などを問わず、音楽だけを聴いて欲しいという想い」から生まれたそうです。

「私にとって音楽は日記で、とても個人的なもので、それを書くことはとても深くて、とても難しいことなんだ。だから、自分のプロジェクトを立ち上げ、匿名で聞いてもらおうと思ったとき、この方が自分の真実を伝えやすいと思った。というのも、私たちは他のことに目を向けすぎていて、外見や様々なことに目を向けているけど、私は本当に音楽だけなんだ。私は音楽と歌詞が大好きで、自分の芸術を大切にしている。そして私はそれを表現し、それを前面に出したかったんだ。」GMA News

若くして業界に身を置く彼女は、プロデューサーにギターを片手にしている風貌をみられ「あの子は あれで何をするつもりなんだろう?」と冗談めいて言われる経験もしたのだとか。女性の才能や黒人の才能を過小評価されていると感じたそうです。

このような経験から、「すべてを明らかにする」という「H.E.R.」で活動することで、「他の誰かが自分の真実を発見するのを助ける」ことにも繋げたかったそうです。

「H.E.R.という名前のおかげで、私の目的はより大きくなり、より多くの人々に影響を与えることができるようになった。ただ音楽と私が話す言葉を聴けるんだ。ただ純粋にその音楽を聴いて、その人の立場に立って、「これは私だ、これは私の人生だ、これは私の日記だ」と思えるようなね。」EBONY

最初でこそ匿名性の高いアーティストとして音楽を発信してきたH.E.R.ですが、現在では「音楽だけに惹かれて欲しい」というゴールは達成したとのこと。過去のインタビューでも「いずれは匿名じゃなくなると思うわ。」と語っていて、最近ではずいぶんと素顔を見る機会も多くなっている気がしますね。

H.E.R.として… / 2016-2020の活動

最初のシリーズ『H.E.R.』で多くの称賛を獲得

2016年に「H.E.R.」へ改名し新たなペルソナを手に入れた彼女は、デビューEP『H.E.R. Vol 1』をSoundcloudにドロップ。翌年2017年には続編『H.E.R. Vol 2』をリリースしました。

2017年10月20日には、この2枚のEPの楽曲に7曲を追加したデビュー・コンピレーション・アルバム『H.E.R.』をリリース。バイオグラフィーもなく、ジャケットには謎の全身シルエットだけ描かれている秘匿性のある彼女は、瞬く間に人々の話題になりました。

ブライソン・テイラーとの「Focus」、ダニエルシーザーとの「Best Part」でチャートを駆け上がり、アリシア・キーズ、リアーナ、ジャネット・ジャクソンなどの大物アーティストが彼女を絶賛したといいます。ジャネットに至っては、「妊娠中にH.E.R.の曲のおかげで助かった」とまで言っていたそうです。

『H.E.R.』のシリーズからは、2019年の第61回グラミー賞で5部門へノミネート、ダニエル・シーザーとの「Best Part」ではベストR&Bパフォーマンス賞」を受賞し、アルバム全体として「ベストR&Bアルバム賞」を受賞しました。

『I Used to Know Her』

2018年には、2枚のEP『I Used to Know Her: The Prelude』と『I Used to Know Her: Part 2』をリリース。そして2019年8月に2作目のコンピレーション・アルバム『I Used to Know Her』をリリースしました。

「多くの曲は、もっと高めたい、もっと音楽性を引き出したい、もっと自由にやりたいというところから生まれてきたんだ。 『I Used to Know H.E.R.』は、これまでの人生における私の視点なの。私が経験したすべてのこと、私の物語、そして私という人間を作り上げたものだよ。タイトルは、高校時代の私を知っている人たちが、私を押しのけて、あるいは軽視して、私を誰でもないと思っていたのに、今はこうなっているということから来ているんだ。昔、あの子を知っていたよ。とよく言われる。」ELLE

『I Used to Know Her』では、2020年の第62回グラミー賞でさらに5つのノミネートを獲得しました。

アルバムのカバーアートのポラロイド写真は、H.E.R.が若い頃の自分にギターの弾き方を教えている姿が描かれています。しかし、それまでのEPではその姿はぼかされ、EP1→EP2→アルバムになるに連れ徐々に鮮明になっていきました。

匿名性を持つ事で「音楽のみに集中して欲しかったH.E.R.」から、「自分自身という人物像を掘り下げる(本当のガブリエラ・ウィルソンに立ち返る)」という点にアイデンティティが移行していた時期なのかなとも感じられますね。

「I Can’t Breathe」での問題提起

2020年6月19日に、その年の5月に起きたジョージ・フロイド氏の事件(警察による無防備な黒人への暴行事件)を受けて書いたプロテストソング「I Can’t Breathe」。第63回グラミー賞で「ソングオブザイヤー(最優秀楽曲賞)」を受賞し、暴力や人種差別についての問題提起がなされた曲です。

この曲は、「Slide」などを共同作曲するソングライターTiara Thomas(ティアラ・トーマス)とのFaceTimeでの会話から生まれたそうで、ジョージ・フロイド氏の事件や、世間で起こっていることについて話しているうちに生まれたのだそうです。

「私が書く音楽はすべて私にとって個人的なもので、この世界における私の見解なのよ。そして自分の住む地域に影響を及ぼしているものに対して、なぜ視点を持たないのだろう?痛みを感じたり、重く感じたり、兄弟や姉妹、おじさん、いとこ、誰にでも起こりうることだと感じたりすることに対して、なぜ声を上げようと思わないんだろう?」NME

黒人とフィリピン人のハーフである彼女。「アジア人コミュニティ」「黒人コミュニティ」の代表として、両コミュニティにおける不公平感、喪失感、痛み、恐怖など感情を代弁する役割も担った曲です。

「ブラックライブズマター」「アジアンヘイトクライム」などがアメリカでは取り沙汰されていますが、こうした差別による蛮行は、日本に住んでいると中々感じられないと思います。そういう意味でも、世界や世間で何が起きているのかを知るきっかけになる重要な曲です。

『Back of My Mind』/心の奥底への探求とR&Bの祝福

2021年6月18日には、デビュー・アルバム『Back of My Mind』をリリースします。これまで2枚のアルバム(『H.E.R.』『I Used to Know Her』)をリリースしていた彼女ですが、いずれも位置付けはコンピレーションアルバムであったため、今作が初のオリジナルアルバム。

「Back of My Mind」の文字通り、「心の奥底」を代弁する作品であり、アルバム全体を通して「心の奥底にある考えや感情を表す」というテーマを持っています。

「私が経験したこと、経験したこと、感じたこと、そして時々言うのをためらってしまうこと…正直すぎる、傷つきやすい、感情的すぎる、攻撃的すぎる…最初のプロジェクト以来過去数年間、私の心の奥底にあったものすべてが含まれているんだ。それはまるで、私の魂を覗き見るようなものね。」Genius

また、「R&Bを祝福する作品を作ること」も目的の一つで「新しいR&Bのかたち」、「R&Bに関わる要素への称賛」などの想いも込められているそうです。

「私は、R&Bの様々な動きや、R&Bのほぼ全ての時代を表現したいと思っていたんだ。ソウルや90年代のような曲などね。」Apple Music Interview

匿名から始まった彼女が、『I Used to Know Her』で自身を見つめなおし、『Back of My Mind』で根底をさらけだしました。プロセスやフローで見ていくととても興味深い変化が感じられます。

『Back of My Mind』については過去の記事でも深く掘り下げているので、こちらも是非あわせてご覧ください。

関連記事:H.E.R.のデビューアルバム『Back of My Mind』に込められた想いとは

最後に

H.E.R.を紹介しました。個人的にはアルバム『Back of My Mind』から彼女のことをちゃんと知り始めて、匿名性を持つアーティストだってのは耳に入ってはいたのですが、10歳の頃から活躍していたのは驚きでした。

今や匿名じゃなくなってきている理由も、一言では言い表せないものの、彼女の成長や流れをを追ったことによってなんとなく分かった気がします。匿名にすることで「音楽だけに集中して欲しいフェーズ」はもう終わったんだろうなってのが、『Back of My Mind』の作風に表れている気がします。

記事執筆の最中は『Back of My Mind』を改めて聴き直したんですが、やっぱりハンパない。。なんて聴きごたえのあるアルバムなんだろうかと。笑

というわけで今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

おすすめ記事:最新R&Bプレイリスト「Take It Easy」Vol.26
おすすめ記事:2022年9月 / 今月チェックした作品を紹介

Reference

Interview Magazine「Mysterious R&B singer H.E.R. already has a fan in Rihanna」
Genius「H.E.R. Breaks Down The Meaning Of “Slide”」
Music Industry Quarterly「It’s H.E.R. World! Singer Songwriter Talks with M.I.Q.」
GLAMOUR「GLAMOUR’s July digital coverstar H.E.R.: ‘I have been placed at this time, at this moment, for a reason’」
GMA News「Fil-Am singer H.E.R. talks of her Pinoy roots and writing the song featured in movie ‘Judas and the Black Messiah’」
allure「How H.E.R.’s Pageant Girl Roots Shaped Her Perception of Beauty」
EBONY「H.E.R TALKS GRAMMY NODS, EMPOWERING YOUNG WOMEN & FUTURE IN MUSIC」
ELLE「H.E.R. Is More Than a Rising Star—She’s a Damn Galaxy」
NME「H.E.R.: “I definitely feel a responsibility to use my platform. We should all speak out against things that we don’t like”」
Genius「Back of My Mind H.E.R.」
Apple Music「H.E.R.: ‘Back of My Mind,’ Giving Voice to the Voiceless, and Modern R&B | Apple Music」
Oprah Daily「Who Is H.E.R.? Everything to Know About Oscar Winner Gabi Wilson」
popculture「’SNL’: Meet H.E.R., the Singer Performing Tonight」
BAM「GABI WILSON SHINES AT 17」

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