2020年ベストアルバム&EP後編
2020年の個人的ベストアルバム(EP)の後編です。前編はこちら。
たらたらと書いていたら、もうすでに2021年も1月が終わろうとしていますね(焦)
今回は6月から12月までにリリースされた作品をラインナップしていきます。
Reuben Vincent – 『Boy Meets World』
リリース:6月26日
Reuben Vincentは、当ブログでも紹介してしまったほど、個人的に注目したラッパーで、彼を知ったのもこの作品がきっかけでした。
ノースカロライナ州シャーロット出身で、9th Wonder率いるJamla Recordsの新鋭ラッパー。
若干16歳でJamla Recordsの契約書にサインをした彼の才能は、9th Wonderのお墨付きということで、渋めだけど、フレッシュさもある感じが好きです。楽曲「Albemarle Road」なんかはヘビロテしました。
今後フルレングスのアルバムもリリース予定(?)ということで、随時注目しておきたい人物です。
Terrace Martin, Robert Glasper, 9th Wonder, Kamasi Washington – 『Dinner Party』
リリース:7月10日
こちらも当ブログでは登場済の作品です。
言うまでもないという名アーティスト4人が揃ったこのカルテットは、2020年ベスト作品に選んでいる人も多いと勝手に思ってます。
元々Terrace MartinとRobert Glasperの二人によって、Robert Glasperの「R+R=NOW」ツアー中に結成されたのが始まりなんだそうで、後にTerrace Martinが9th WonderとKamasi Washingtonを加入させて現在の4名になったんだとか。
それにしてもすごい4人ですよね。
Felt – 『Felt 4 U』
リリース:8月7日
ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動するヒップホップデュオで、AtmosphereのSlugと、Living LegendsのMursからなるグループ。
Mursは昨年(2019年)の『THE ILIAD IS DEAD AND THE ODYSSEY IS OVER』をはじめ、9th Wonderとのタッグ作でも知られていますよね。
Feltは、2002年の後半にThe Grouchのプロデュースのセルフタイトルアルバムでデビュー後、『Felt 4 U』を合わせてこれまでに4枚のアルバムをリリースしているようです。
2005年リリースの『Felt 2: A Tribute to Lisa Bonet』をプロデュースしたAnt(Atmosphere)と今作も手を組み、出来上がった作品です。
落ち着いたBPMの中に、ファンキーさがあるサウンドが秀逸だと思いました!
Nas – 『King’s Disease』
リリース:8月21日
2018年にリリースされた12枚目のアルバム『NASIR』に続く最新作『King’s Disease』。Mary J. Blige、Lil Wayne、Travis、Scott、Beyonceなどを手掛けたHit-Boyが全面プロデュースした作品で、フィーチャーアーティストも豪華絢爛。
アルバムのタイトル「King’s Disease」は直訳すると「王様病(金持ちの病)」ということで、健康を考えない食生活によって人が痛風を発症するように、人生において「正しいことに焦点を当てて、否定的な行動にふけることを避けなければならない」ということの比喩としてのテーマ性があるんだとか。
アルバムの先行シングルでは、「黒」という言葉の意味を再定義したとも言われている楽曲「Ultra Black」が4曲目に収録。この曲は、自身の「黒さ」に誇りをもち、「黒人であることの美しさを認めよう」というメッセージが込められた曲で、「Black Lives Matter」という言葉が飛び交う要因にもなった、痛ましい事件が起きた2020年という年にも刺さるような一曲です。
リリック全部を解読してる訳じゃ全くないので、とてもこの作品が「何を伝えてる」とか言えないですが、米メディアの『Consequence of Sound』(他)、いくつかのアルバムレビューから解釈やヒントを得ると、
「自己愛の重要性」、「黒人女性の仲間を愛し尊敬すること」、「平和を守ること」、「これらを守ることが、アフリカ系アメリカ人男性が、感情的・精神的な安定を得るために必要な教訓であること」
といった感じのアルバムメッセージが見えてきました。
もちろんサウンドも最高で、特にアルバム幕開けから4曲目の「Ultra Black」までの流れがシビれました。
GQ – 『A Midsummer’s Nightmare』
リリース:9月18日
オークランドのラッパーで、冒頭にも紹介したラッパーReuben Vincentと同じく、9th Wonder率いるJamla Recordsの一員でもあります。
また、バスケットプレーヤーだったこともファンの間では有名で、ノースカロライナの大学バスケットチーム「UNC Tar Heels」で2005年に全米選手権を制覇後、ロサンゼルス・レイカーズのキャンプに参加したという経歴も持っている人物。
今作は9th Wonderが全面プロデュースを手掛けたEPで、とにかくカッコいいです。渋い。
Elzhi – 『Seven Times Down Eight Times Up』
リリース:9月25日
ミシガン州はデトロイト出身。元スラム・ヴィレッジのメンバー。ソロ・アーティストとしても2011年の『eLmatic』などの名作を世に出しているラッパーElzhiの最新作。
「Seven Times Down Eight Times Up(七転び八起き)」と題されたこの作品は、
多くの「ダウン」を経験した一年のマントラであり、何に直面しても無敗であり続けること、そして「人生 」と呼ばれる鉈を振り回す狂人に打ちのめされた後に立ち上がることを思い出させてくれる。Seven Times Down Eight Times Up
と明記されていて、もちろんトラックやラップがカッコいいからココに記載している作品なんですが、こういうメッセージを読むと一層パワーをもらえるような作品だなー。と個人的に感じているところです。
Bryson Tiller – 『ANNIVERSARY』
リリース:10月2日
ケンタッキー州ルイビルのシンガーBryson Tillerの3枚目のアルバムであり、デビューアルバム『Trapsoul』のリリースから5周年というタイミングでリリースされたまさに「ANNIVERSARY」な作品。
デビュー作『Trapsoul』を彷彿とさせる(対比的な)アルバムジャケットが印象深い今作は、やっぱり比較される作品が『Trapsoul』。
ということで、いくつかのアルバムレビューを見てみると辛口評価が多い感じで、「期待を超えてこなかった」的なレビューがちらほら。
というよりも、『Trapsoul』が良すぎて、期待値が上がりすぎたことが今回のレビューに繋がった感じが文面からも読み取れました。
ただ個人的には「I’m Ready for You」なんかは洗練されている感じがしたし、作品全体を通して『Trapsoul』よりもしっとりとした感じのあるR&Bで好きでした。
「Inhale」は、SWVの「All Night Long」や、Mary J. Bligeの「Not Gon’ Cry」がサンプリングされているという事で、R&Bクラシックへのオマージュ感がある感じも好きでした。
Statik Selektah – 『The Balancing Act』
リリース:11月27日
2020年ベストアルバム最後の作品は、マサチューセッツ州ローレンス出身で、東海岸を代表するDJであるStatik Selektahの最新作。
11月の半ばにJoey Bada$$$ & Nasの「Keep It Moving」のビジュアルが公開されて、アルバムリリースの情報が舞い込んできて、
蓋を開けたらやっぱり良い!っていうシンプルで面白味ないかもですが、そんな感想です。
というか、フィーチャーされているアーティストが高級詰め合わせパック過ぎて、これは聞き逃せないだろうというラインナップ。
だし、やっぱりStatik Selektahのこのサウンドの質感は、個人的には安心感があるというか、その2ポイントだけでお腹いっぱいだし、リリースが2020年残り一か月を残してというタイミングで、年末に凄いの来たなあーっていう圧倒された感じでした。
全トラック3分弱というサイズ感の中で、基本複数人のアーティストがラップするっていうテンポ感も凄く好きでしたー。
まとめ
ということで2020年個人的ベストアルバム(EP)でした。
全体を通してみえてきた感想は「9th Wonder恐るべし(すげえ)」っていうところでした。こうなってくるとJamla Recordsの動きに期待が膨らむのと、Rapsodyの新しい作品なんかも2021年に出たら良いなあーと思いました。
実際アルバム通してー。というよりも、この曲がー。っていう作品も沢山あるので、今後そういうところもピックアップしてお送りできたらいいなーと思いました。
ということで最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
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