2022年10月 / 今月チェックした作品を紹介
その月にリリースされたもので、個人的にチェックし、メモしておきたい作品(アルバム・EP・ミックステープなど)をピックアップする記事です。
10月は以下のラインナップとなっております。(※前半の方は9月リリース作品の取りこぼしを回収しております。)
1.Prodigy – 『The Hegelian Dialectic 2: The Book of Heroine』
ヒップホップ・デュオ「Mobb Deep(モブ・ディープ)」のメンバーProdigy(プロディジー)の遺作アルバム『The Hegelian Dialectic Volume 2: The Book Of Heroine』。本作は、生前である2017年の『The Hegelian Dialectic』に続く二作目。三部構成で展開されるそうです。
「セカンドアルバムは、ヒロインの本と呼ばれている。ヒロインは女性のような綴りで、人間関係系の曲や女性特有のパーティやセックス、ドラッグを扱っているからだ。」Rock The Bells
そして、第三弾となる続編『The Book of The Dead』は2023年に登場する予定だそうです。Earth, Wind & Fire、El DeBarge、Trey Songz、Snoop Dogg、Rick Ross、2 Chainz、Quavo、Takeoff、Beyonceら名だたるアーティストがバックアップしています。
2.The Isley Brothers – 『Make Me Say It Again, Girl』
伝説的音楽グループThe Isley Brothers(アイズレー・ブラザーズ)の新作。ビヨンセとの「Make Me Say It Again, Girl」は、1975年の彼らの名曲をリバイバルしたもので、ビルボードの「アダルトR&Bエアプレイ・チャート」では1位を獲得。この曲を聴いてビヨンセのお母さんは涙を流したのだとか。
「ビヨンセのお母さんから、ビヨンセがレコードを聴かせてくれたとき、どれだけ泣いたかメールが来たんだ。僕とカンディと彼女の妹は、最初に聴いたときに一緒にいて、泣いていたんだ。その後、アーニーと彼の奥さんがやってきて、また泣いていたよ。レコードを聴いて泣くなんて、もう何年もやっていないよ(笑)。」Billboard
さらに、ロナルド・アイズレーの妻でありマネージャーのカンディ、その妹、アーニー・アイズレー、その奥さん、みんなで曲を聴いて泣いたそう。それほど想いの詰まっている曲なのが分かりますね。
3.Fatnice – 『The Baddest』
フィラデルフィアの世界的なDJ/プロダクションクルー「Illvibe Collective」というレーベルからリリースされた、ラッパーFatniceのプロジェクト。
前衛的なトラックが多く、首をガッツリ振らされる曲ばかりでした◎。
4.Jacques Retro – 『Culmination』
DMVを拠点とするプロデューサー/マルチインストゥルメンタリストのJacques Retroのインストゥルメンタル集。
「ビートヘッズのパラダイス」と自身が言う本作は、強靭なドラムラインをベースに、多彩なメロディが盛り込まれてます。
「Culminationは、僕が長い間取り組んできたことの一部なんだ。自分が好きじゃなければ人に聴かせないし、音楽のセンスもかなりいいんだ。このプロジェクトは、ビートヘッズのパラダイスだよ。」Bandcamp
5.Cormega – 『The Realness II』
ニューヨーク・クイーンズのラッパーCormega(コーメガ)の最新作であり、2001年の代表作『Mega Philosophy』の続編です。
「俺は続編を作ったことがなく、ファンの声に耳を傾けた。すべてのアルバムの中で「パート2を作るべきだ」と言われるのがいつも『The Realness』だった。「Realnessパート2を作ってくれ。The Realness The Realness The Realness 」ってね。あのアルバムはプレッシャーが大きいから、最初は躊躇した。でもその挑戦を受けてみたんだ。やるしかないってね。」HIPHOP DX
ファンの声を反映した本作、「ファーストアルバムに参加したプロデューサーやアーティストを呼び戻すのに忍耐と運が必要だったんだ。」とも語り、長い歳月を経た続編となったようです。
6.Janet Jackson – 『The Velvet Rope (Deluxe Edition)』
1997年のジャネット・ジャクソンの6枚目のアルバム『The Velvet Rope』の、25周年を記念したデラックスエディション。
人気のB面曲、「Accept Me」「God’s Stepchild」や、シングルでしか聴けなかったリミックスなどが収録されています。
個人的には「Got ‘Til It’s Gone」のJay Dee Remixが聴けるのは熱いなと思いました。
7.thuy – 『girls like me don’t cry』
ベイエリア出身のベトナム人シンガーソングライターThuyの2nd EP『Girls Like Me Don’t Cry』。当ブログでも以前紹介したシンガーのRINIをフィーチャーした「Trust」とや、先行シングル「Playing Tricks」などが収録されてます。
クリアな歌声、清楚な歌声が好きなおすすめ◎。ちなみにSpotifyユーザー限定ですが、彼女がカバーしたTamiaの「So Into You」も最高なのであわせて是非〜。
関連記事:RINIとは / ロマンチック&メロウな歌声のR&Bアーティスト
8.Alex Vaughn – 『The Hurtbook』
メリーランド州のシンガーソングライターAlex Vaughnのデビュープロジェクトです。(音楽レーベル「LVRN/Interscope」との契約後初のプロジェクト)
「このプロジェクトは、昔の恋愛で考えたことをまとめたものだけど、恋愛以外にも当てはまるパターンや出来事をキルティングした地図に成長したわ。自分自身に正直であること、そして起こっている変化に対してどう感じているかが書かれているんだ。最も重要なのは、これらの一連の出来事があなたを傷つけたとしても、あなたは壊れていないことを思い出させてくれることよ。」Rated R&B
5歳からジャズピアノなど古典的な音楽レッスンを受けてきたという彼女。どこかクラシックさが感じられ、「渋み」や「しとやかさ」を味わえる作品です。
9.Robert Glasper – 『Black Radio III (Supreme Edition)』
グラミー賞を4度受賞したミュージシャンRobert Glasperの2022年のアルバム『Black Radio III』のリイシュー版。
ディスク2に故マック・ミラーをフィーチャーした「Therapy pt.2」、ルーク・ジェームズをフィーチャーした「My Queen」、ビラルとアレックス・アイズレーとの「Voyage to Atlantis」、エミリー・キングが参加した「Invitation」などが収録されています。
ちなみに「Therapy pt.2」は、マック・ミラーが2014年にリリースした「Therapy」の続編なんだそうです。
10.Sebastian Mikael – 『PHILEO』
スウェーデン出身、ボストン育ちのシンガーSebastian Mikaelの新作EP。
Youtubeの「COLORS」でも披露された「Scene 1」をはじめ、ミッド〜スローテンポな曲で構成された本作は、耳心地最高レイドバックミュージックです。
11.Joyce Wrice – 『Motive』
南カリフォルニアの日系シンガーJoyce Wriceの新作EP。これまでのジョイス作品とは毛色の違うアップテンポな曲が集まる一昨です。
本作は、カナダのプロデューサーKaytranadaがプロデュースした「Iced Tea」が、前作のアルバム『 Overgrown』が発売された1ヶ月後に出来上がったことから始まったそう。
実際に「Iced Tea」が作品全体のトーンを決めたそうで、「何か踊れるような」「何か祝福できるような」「何かつながるような作品を出したい」と思ったところから出来上がったそうです。
僕も見に行かせていただいた、ジョイスの日本公演(ビルボードライブ)の前日くらいにアップされた作品だったのもあり、テンションぶち上がりました。
12.PJ Morton – 『Watch The Sun (Deluxe)』
ニューオーリンズ出身のシンガーソングライター/ミュージシャンのPJ Mortonの8枚目のアルバム『Watch The Sun』のデラックスエディション。
「The Better Benediction Pt. 2」、「If It Wasn’t for You」という未発曲が追加され、各曲のインストも収録されています◎。
13.Phabo Dj Illadell. OG Ron C – 『Soulquarius (Chopped Not Slopped)』
カリフォルニア州サンディエゴ出身、LAを拠点に活動するシンガーソングライターPhaboのアルバム『Soulpuarius』のChopped Not Slopped版。
最新R&Bを軸にしたプレイリスト紹介の記事にも書いたのですが、アルバム全体がChopped(テンポをスローにしてミックスしてある)なので、流れが良く、特有のスモーキーさもあってバッチリハマりました。
スローテンポに編曲する系の作品は、あまり聴こうという感じになってなかったのですが、本作には独特のケミストリーがあって◎でした。
14.Smino – 『Luv 4 Rent』
セントルイスのラッパーSminoの3枚目のアルバム。J・コール、Doechii、Fatman Scoop、Cruza、Lucky Daye、Phoelix、Cory Henry、Ravyn Lenae、Lil Uzi Vert、Reggieなどがゲスト出演してます。
本作は「自己愛」が大きなテーマの一つになっているそう。
Sminoのアルバムカバーアートは常に「髪をセットしている自分」が描かれていますが、『Luv 4 Rent』も例に漏れずヘアセットの様子が描かれています。
『Luv 4 Rent』のカバーアート(自身がヘアセットする様子)は「自分の王冠は自分で守ることができる」という自己愛的なインスピレーションもあるのだとか。
15.Babyface – 『Girls Night Out』
伝説的なシンガーBabyfaceがKehlani、Queen Naija、Ella Mai、Tiana Major9といった新世代の女性アーティストたちとコラボレーションしたアルバムです。
「僕は自分がそれほど思い入れのない世代のために、どう曲を書き続けられるかを考えたかった。このアルバムを作ることで、僕は自分自身であると同時に、若いアーティストと一緒に仕事をし、彼女たちの声を聞き、一緒に書くことができたんだ。」Rated R&B
Babyfaceという一本の軸・テーマ性がありながら、コンピレーション的な要素も楽しめる作品です◎。
16.Duckwrth – 『Chrome Bull』
LA、サウス・セントラルのラッパー/シンガー、Duckwrthの新作EP。ダンスミュージックを主軸としながらも、ヒップホップやR&B、歌の要素がグラデーション的にミックスされていて、引き込まれました◎。
17.Mikhala Jené – 『The Missing Peace』
ノースカロライナ州ジャクソンヴィル出身のシンガーソングライターMikhala JenéのメジャーデビューEP。
EPのタイトルにはいくつかの意味があるそうで、本人曰く、
「ます、私が経験した傷心や失望の多くに平和を見出し、和解するための旅であること」Rated R&B
「もうひとつは、毒になるのではなく、平和を選択するための自己責任の種を蒔くことに情熱を注いでいることよ」Rated R&B
とのこと。自身に「癒し」を与えるとともに、「成長」や「進化」を促すような音楽を目指しているそうです。
18.dvsn – 『Working On My Karma』
シンガーDaniel DaleyとプロデューサーNineteen85からなるカナダのR&Bデュオdvsnの新作です。
エグゼクティブ・プロデューサーの一人ジャーメイン・デュプリいわく、このアルバムは「男の挑戦」について語るものなんだそう。
例えば4曲目の「Stay Faithful」なんかは、「自分の妻を裏切ってしまった後悔しまくっている男の姿」を描いていたり、男性の特有の葛藤がR&Bとして昇華されています。おもしろい。
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