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H.E.R.のデビューアルバム『Back of My Mind』に込められた想いとは

ALBUM紹介 Music R&B

4度のグラミー賞を受賞した最も注目されていると言っても過言ではないR&BアーティストH.E.R.。

2021年6月18日にリリースされた『Back of My Mind』を聴いて「本当にハンパないなこの人」と思い、改めてデビューアルバム『Back of My Mind』についてまとめようと思いました。

作品に込められた思いや、アルバムの内容などを紹介していきたいと思います。

H.E.R.を深掘りした記事もあります。わせてご覧いただくと理解が深まると思うので是非。

H.E.R. / 匿名でデビューした若きR&Bアイコンの正体

目次

  1. H.E.R.デビューアルバム『Back of My Mind』
    『Back of My Mind』は「心の奥底」を代弁するアルバム
  2. H.E.R.『Back of My Mind』シングルカットを紹介
    1.Slide ft.YG
    2.Damage
    3.Hold On
    4.Come Through Ft.Chris Brown
    5.We Made It

H.E.R.デビューアルバム『Back of My Mind』

2021年6月18日リリース。H.E.R.の通算三枚目のアルバムですが、位置づけはデビュー・アルバム。最初のフルレングスアルバムということで、期待の集まった作品です。

アルバムには以下のゲストアーティストと、

  • Lil Baby
  • Ty Dolla Sign
  • Yung Bleu
  • Cordae
  • DJ Khaled
  • Bryson Tiller
  • Chris Brown

以下の作曲陣が名を連ねています。

  • Mike Will Made-It
  • Hit-Boy
  • Tiara Thomas
  • Kaytranada
  • Thundercat
  • Darkchild

このアルバムは「ビルボード200チャート」を6位デビュー。「ビルボード・トップR&Bアルバムチャート」1位、「ビルボード・トップR&B/ヒップホップ・アルバム・チャート」で4位を獲得。また、収録中の6曲は「ホットR&Bソング・チャート」にランクインしています。

『Back of My Mind』は「心の奥底」を代弁するアルバム

アルバム名は、タイ・ダラー・サインとコラボした、アルバムの2曲目に収録の曲「Back Of My Mind」に由来しているそうです。

楽曲「Back Of My Mind」自体は元恋人との絆を描いたロマンスソングです。曲自体は恋愛モノであるものの「心の奥底にある考えや感情を表す」といったテーマがあり、アルバム全体を通したテーマでもあるようです。

「この曲を含めて、このアルバム全体が全ての考えを表しているの。心の奥底にある考えや感情を表しているわ。私が言うのを恐れていたこと、私が今持っているもの、それら全て。」Youtube RELEASED

「Back of My Mindは、弱さを受け入れること、つまり、周りの雑音を静めて自分の声に耳を傾けることができるようになること。それは、私を私たらしめている多くの層よ。私たちが共有することを恐れ、言うことを恐れ、行うことを恐れているすべてのもの。」 Genius

また、「私たちが現実を直視することを恐れて、口にすることができないような考えや感情・物事を歌った曲のコレクション」だとも語っています。

楽曲「Back Of My Mind」のフレーズもそれを物語っている気がします。

And I can't say it won't cross the line 
(私には言えない。その一線は越えない)

And actin’ like I'll be alright
(そして、私は平気なように振る舞う)

『Back of My Mind』はR&Bを祝福した作品

『Back of My Mind』で伝えたかったことはもう一つ。「R&Bを祝福する作品を作ること」です。

私にとっては音楽の世界で今起こっていることを象徴するような、現代的なレコードを作ることが重要でした。私たちがやっていたような曲や、もう少し削ぎ落とした曲、あるいはもっと生のドラムを多用した曲などもあります。私は、R&Bの様々な動きや、R&Bのほぼ全ての時代を表現したいと思っていました。ソウルや90年代のような曲などです。Apple Music Interview

彼女は「R&Bの祭典」とも表現しているようですが、要するに、多様性のあるR&Bの作品にしようという試みがあるようです。

アルバム全体を俯瞰してみえてくるバリエーションも感じられます。

  • 生楽器を多用したオルタナティブR&Bと表する「We Made It」
  • よりヒップホップ的な雰囲気を醸し出したというLil Babyをフィーチャーした「Find A Way」
  • 政治的ステートメントを発した曲で、「マーヴィン・ゲイを彷彿とさせる」と言われている「Bloody Waters」
  • Jimmy Jam & Terry Lewis(サンプリング曲を「Damage」で使用)やDarkchild(「Exhausted」をプロデュース)など、R&B黄金期の重鎮がクレジットに名を連ねているなど

取り上げたのは一部ですが、様々なR&Bの要素が盛り込まれているのが感じられます。

『Back of My Mind』シングルカットを紹介

ここからは『Back of My Mind』のシングルを紹介。アルバムリリースまでに「Slide」「Damage」「Hold On」「Come Through」「We Made It」の5曲のシングルが発表されました。

Slide ft.YG

リリース:2019年9月27日

ロサンゼルス・コンプトン出身のラッパーYGとのコラボソング。彼女の出身地である「ベイエリアの雰囲気を出したかった」と語られている曲です。

「slide」という言葉は、彼女の出身地サンフランシスコ・ベイエリアでは、「when are we going?」や「where are we going?」を意味するスラングだそう。(「どうする?」「何する?」「どこいく?」みたいなワクワク感のある意味で使われているって事なんでしょうか。)

ベイの人々はいつも「I’m finna slide」と言っているわ。今この瞬間を大切にしようという気持ちが込められているのよ。genius

とにもかくにも「今この瞬間を大切にしよう」「楽しくいこう」的なテーマがあるようです。MVからもその空気は感じ取れますよね。

また、YGを起用した理由については「この曲に西海岸を象徴するアーティストのYGが参加したら楽しいだろうな」との考えがあってのことだそうです。

YGが初対面で言った一言で共演が決定した?

これまでH.E.R.はSNSの露出を最小限に、さらにライブでは大きなサングラスを着用するなど「ミステリアスさ」や「匿名性」のあった人物でした。

YGとはコーチェラ・フェスティバル(カリフォルニアで行われる大規模音楽フェス)で出会ったそうで、H.E.R.はその日もメガネをかけて歩いていたそう。

H.E.R.を見つけたYGは「君の可愛い顔を見せてくれ、眼鏡を外してくれ」と言ったそうで、この瞬間「私は彼と一緒に何かをやるべきだ!」と思ったそうです。

元々YGのファンだったというH.E.R.。この一言はとても嬉しかったのでしょうね。ちょっとしたときめきエピソード。

Damage

リリース:2020年10月21日

5月13日にはRIAAからプラチナ認定も受けた、アルバムのセカンドシングル。

この曲は、大切な人があなたのことを「当たり前の存在」と思ったとき起こる「ダメージ」について歌った歌です。

トラックにはHerb Alpertの1987年の曲「Making Love In The Rain」がサンプリング。この「Making Love In The Rain」を手掛けたのが、あのJanet Jackson作品を多く手掛けた、名プロデューサーデュオのJimmy Jam & Terry Lewis。

Herb Alpert – Making Love In The Rain

H.E.R.本人も「私たちは二人とも(「Damage」のプロデューサーcardiacも)ジミー・ジャムとテリー・ルイスの大ファンであり、ハーブ・アルバートのファンであり、ジャネット・ジャックソンのファンなんです」と語っていて、Jimmy JamとTerry Lewisの名前この曲にクレジットされています。

先人たちの築いてきたものに敬意を払っている証拠ですね。

また、LAのロキシーシアターで撮影されたという、バンドセットが組まれたミュージックビデオもバッチりマッチしてます。

Hold On

リリース:2020年10月27日

アルバム第3弾シングル。この曲も恋愛の歌で「誰かを好きになった時に起こる無防備さ」を描いた歌です。

もう少し詳しく掘り下げると「自分が愛を強く感じていても、このままの関係(相手にしがみ続けること)は良くない。一生離れられないかもしれない。」といったような、依存を恐れる気持ち・自立したい気持ちが吐露されています。

音源で聴くのも良いですが、実際のパフォーマンスがめちゃめちゃ活きそうな曲です。「サタデー・ナイト・ライブ」というアメリカの番組で初披露されたらしいのですが、公式で公開されてる映像が無かったので、アメリカのカントリー歌手Chris Stapletonとコラボしたパフォーマンス映像をどうぞ。

Come Through Ft.Chris Brown

リリース:2021年4月23日

人気シンガー、クリス・ブラウンをフィーチャーした曲。男女のデュエットソングなだけあって、こちらも例に漏れず恋愛ソングなのですが、これまでのシングル曲とはまた一味違った内容の曲のようです。

曲の内容をざっくりと引用を借りて説明すると、以下のような感じです。

「フェードアウト」を狙っている親しい友人たちと深夜に密会するために、相手に予定をキャンセルしてほしいというセリフが交わされていますhotnewhiphop

ある男女が「会いたいなー」と思っていて、「予定をキャンセルしてこっそり来てよ」的なニュアンスだと思います。

I don't want them see me gettin' faded
酔ってる(ハイになってる)ところを見られたくないの

「フェードアウト」とは、サビに出てくる一文の「faded」のこと。「ハイになったり、無防備な状態」といった意味があるそうで、それほどに緩んだ状態ということなようです。

「こっそり」という表現が、どこか後ろめたい気持ちを連想させます。海外の考察サイトでは、

語り手たちは元恋人同士(過去に何らかの恋愛の歴史を持っている同士)で、現在は互いに正式なパートナーが居る状態。その二人が「こっそりと」現在の恋人が知らない場所でランデブーしたいのだ。「faded」な状態は今のパートナーには見られたくない。それほど親密に想っていて、今のパートナーでは本当の意味で自由になれないのです。

的な事が書かれていて「なるほどなー」と。しっかりとアルバムテーマである「Back of My Mind(心の奥底)」を反映した曲だと思いました。

We Made It

リリース:2021年6月11日

アルバムのオープニングにして、最後のシングルとしてリリースされた曲です。聴いて、見て楽しめるような「生感」のある曲ですね。

本人も「生楽器を多用した、オルタナティブなR&B」と表現していて、H.E.R.のスキルの高さや、「R&Bの祭典」と表するアルバム『Back of My Mind』の多様性を冒頭から感じさせてくれる曲です。

やっぱり実際のパフォーマンス映像も見たい曲ってことで、貼っておきます!

Watch HER’s Rockstar Live Performance Of ‘We Made It’ | BET Awards 2021

最後に

H.E.R.『Back of My Mind』について堀り下げました。

これまでにはEPやコンピレーションアルバムもリリースしてきた彼女ですが、今作は作品テーマはありつつも「一種の全体像のようなもの」とも語っていました。現時点での集大成ってことですね。

R&Bが取り上げられる大きなきっかけになっていることは間違いないと思いました。今後もどんな動きを見せるのか楽しみです!

最後までお読み頂いた方、ありがとうございました!

おすすめ記事:最新R&Bプレイリスト「Take It Easy」Vol.12 & 13

Reference

H.E.R. Talks Goapele, Bob’s Burgers, and New Album “Back of My Mind” | RELEASED
H.E.R.: ‘Back of My Mind,’ Giving Voice to the Voiceless, and Modern R&B | Apple Music
Genius『Back of My Mind』
H.E.R. Calls On Chris Brown For Smooth “Come Through” Single
Song Meanings and Facts “Come Through” by H.E.R. (ft. Chris Brown)
Wikipedia Back of My Mind (H.E.R. album)

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