Joey Bada$$ – 「Fallin’」を考察&解説 / ジョーイの新たな一面をみせたR&Bソング
2023年4月7日にリリースされたJoey Bada$$のシングル曲「Fallin’」。プロエラの仲間であるChuck Strangersや、Powers Pleasantなどを含むプロデュース陣のアンビエントなトラックと歌で、R&Bの質感を醸し出す一曲です。
今回はそんな「Fallin’」の内容を、リリックの和訳を用いながら深掘りしていきます。
(※本記事は筆者の感想文が含まれます。あくまで考察としてお読みいただければと思います。)
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「Fallin’」は、Joey Bada$$が新たな一面を見せる曲
@complex @joeybadass is trying something new with his new single, ‘Fallin’ 🌹 #joeybadass #newmusic ♬ original sound – Complex
「Fallin’」はジョーイの新しい芸術的な一面を見せる新曲だとインタビューで語っています。
「このシングルの名前は「Fallin’」だよ。本当にこの曲にはワクワクしているんだ。リスナーがまだ聞いたことのない、自分の新しい芸術的な一面を見せるんだ。」Complex
「元々は俺が歌うだけのフルの曲だったんだけど、バランスを取るためにちょっとしたラップの部分を追加したんだ。この曲でリスクを冒すつもりだよ。」Complex
「リスクを冒すつもり」と答えていることについては、「これまで俺のレストランに食事しに来ていた人達に、今度はデザートメニューを紹介しようとしてるんだ。笑」と述べ、彼がこれまで築いてきた音楽的アイデンティティからの逸脱を意味することと、その変化がファンにどう受け入れられるか確定的でないため、リスクを伴うと考えているようです。
確かにJoey Bada$$は「ラッパー」という肩書きの印象が強いので、シンガー(しかもメロウな恋愛ソング)という一面は、新たな一面だと思いますね。
「Fallin’」のリリックを深読みする
「Fallin’」は情熱的な恋愛について歌っています。全体として、その恋愛に自分自身を捧げることへの準備や情熱を描写。歌い手が、自分が恋に落ちていること、それについてを自己制御したくないという強い感情を抱いていることなどを表現しています。
リフレイン/歌い手が深く恋に落ちていることを暗示
Roses red, violets are blue
(バラは赤く、スミレは青い)
I just might cut off all my hoes for you
(君のためなら他の女性たちとの関係を全て切ってしまうかもしれない)
冒頭のリフレイン部分、英語圏では広く知られている四行詩の最初の2行「Roses are red, violets are blue(バラは赤く、スミレは青い)」が引用されています。
この詩はもともと、16世紀のイギリスの詩が発祥だそうですが、現代ではバレンタインカードなどで使われるようにもなり、恋人たちが愛を伝えるためのお決まりのフレーズになっているようです。
そんな詩の引用から始まる通り、「Fallin’」は歌い手が深く恋に落ちていること、そしてその感情が非常にロマンティックであることを強調しているのが読み取れます。
コーラス/愛する感情に抵抗しない
I’m fallin’ for you
(君に夢中になっている)
And I don’t wanna catch myself
(でも、自分を制御したくない)
No, I don’t wanna catch myself
(いや、自分を制御したくない)
And I don’t wanna catch myself
(そして、自分を制御したくない)
コーラス部分「I’m fallin’ for you / And I don’t wanna catch myself」は、歌い手が相手に強く引きつけられ、その感情から逃れたり、それを制御したりする気持ちがないことを表現。「don’t wanna catch myself(自分を制御したくない)」が繰り返し使われているところからも、強調の意思が感じられます。
「君に夢中になっている」という感情を「制御しない」。つまり、落下する物体のように、恋人に対する愛情に抵抗することなく、その感情に身を任せ、深く落ち込んでいく(Fallin’)という感情や状況を描いているのが伺えます。
ヴァース/詩的なエッセンスで愛情を強調
ヴァースの冒頭では「They say all is fair in love and war and I ain’t ‘fraid to risk it all(恋愛と戦争では全てが許されると人々は言う、そして俺は全てを賭けることを恐れていない)」とラップ。
「all is fair in love and war(恋愛と戦争では全てが許される)」は英語のことわざで、「敵を打ち破るためにはあらゆる手段を尽くすことが正当化される戦争」のように、「恋愛でも手段をいとわず好きな相手をゲットする」という、「ルール無用」的意味合いを持っています。
「通常ならば許容されない行為でも許される」という考え方を示したことわざなので「不道徳だ」と賛否のある言葉でもあるそう。ですが、そこを引用しつつ「全てを賭けることを恐れていない」とラップしていることから、コントラスト強めに意思の強さを表明していることが感じ取れます。
‘Cause you look better next to me, respectfully
(君は俺の隣にいる方が似合ってる、敬意を表して言っておく)
Any nigga tryna get to you, he gotta check with me
(君に近づこうとするヤツがいたら、俺に相談しなきゃならない)
Girl, that’s just the principle, don’t try to call that jealousy
(ガール、それはただの原則だから、それを嫉妬と呼ばないで)
I’m tryna start a legacy, add you to my pedigree
(遺産を築き始めようとしているんだ、君を俺の系図に加えたい)
ヴァースの後半では強引な愛情の価値観を見せつつも、「嫉妬ではなく原則」や「君を俺の系図に加えたい」など、強めの表現を用いることで、愛情の深さを示しているように感じます。ポエティックというか、リリカルな感じも良いですね。好きです。
終わりに
全体的に先述したような比喩や引用が散りばめられていて、サウンド・歌・ラップだけでなく、ポエムとしても楽しめる曲でした。
噂では『JB4』という新作に収録されるとのことで、さらにこの作品がR&Bテイストだ(あくまで噂です)とのこと。個人的にR&B好き人間なので、楽しみであります。
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