Mahalia(マへリア)とは / イギリス出身のサイコ・アコースティック・ソウルアーティスト
「私がアーティストとして常に目指しているのは、音楽でも外でも、できる限り正直でいることだと思うの。」
13歳という若さでレーベル契約を交わし、幼い頃から音楽で人生の道を切り開いてきた、イギリスのシンガーソングライターMahalia(マへリア)。
苦悩・苦難を乗り越えながら、ティーンエイジャーの内に知名度を上げ、イギリスはもとより国内外で影響力を持つアーティストです。
今回はマへリアのヒットソング、生い立ち、注目されたアルバム『Love and Compromise』についてなどを紹介します。
Mahalia(マへリア)
名前 | Mahalia(マへリア) |
本名 | Mahalia Burkmar(マヘリア・バークマー) |
生年月日 | 1998年5月 |
出身 | イギリス・レスターシャー州・チャーンウッド地区・サイストン |
主な作品 | ALBUM ・『Diary of Me』2016 ・『Love and Compromise』2019 EP ・『Head Space』2012 ・『Never Change』2015 ・『Seasons』2018 ・『Isolation Tapes』2020 |
Mahalia(マへリア)は、イギリス・レスター出身のシンガーソングライター。フォーブスのアンダー30のリストにも含まれ「英国で最も有望なR&Bの才能の一人」と評されています。
13歳という若さでアトランティック・レコードと契約し、Youtubeの音楽プラットフォーム「COLORS」でのパフォーマンスがバイラルになると、その人気は爆発。これまでにはケンドリック・ラマーやテイラー・スウィフトらと頻繁にコラボレーションしているプロデューサー、Sounwave、DJ Dahi、Sam Dewらとのレコーディングや、英国のR&Bスターであるエラ・メイとのワールドツアーなどを敢行しています。
2019年のデビュー・アルバムであり代表作の『Love and Compromise』は、「R&B」「ダンスホール」「ポップ」などさまざまな音楽の影響を受けたジャンルレスな作品となり、多大な注目を獲得。エラ・メイをフィーチャーしたヒットシングル「What You Did」ではビルボードR&Bチャートにもランクインしました。
その後も国内外問わず、影響力のあるアーティストと多数のコラボレーションが実現。ジェイコブ・コリアー、タイ・ダラー・サインとの「All I Need」では、第63回グラミー賞最優秀R&Bパフォーマンス賞にもノミネートされました。
近年では、有色人種の若い女性たちが業界の壁を破るのを助けることを目的に作られたプロジェクト「Sisters In Sound」を構想し、その影響力を社会貢献・支援のためにも使っています。
Mahalia(マへリア)のトップヒットソング
1.What You Did (feat. Ella Mai)
リリース:2019年9月4日
収録作品:『Love and Compromise』
マへリアのデビュー・アルバム『Love and Compromise』の5枚目のシングル。イギリスの歌姫Ella Mai(エラメイ)をフィーチャーした、二人の初めてのコラボソングです。
浮気されたことについてを歌った曲で、傷ついたこと、軽蔑されたこと、裏切られたことなどへの想いが込められています。
「長い間、そういうことを経験したことがなかったから避けていたんだけど、実際に経験してみて、”ああ、なぜこういう歌がたくさんあるのかが分かったよ、だって痛いんだもん!”って思ったわ。」Genius
トラックはCam’ronの名曲「Oh Boy」がサンプリングされています。
関連記事:グラミー賞を獲った気鋭のR&Bシンガー「Ella Mai(エラメイ)」とは
2.I Wish I Missed My Ex
リリース:2018年5月31日
収録作品:『Love and Compromise』
マへリアがアルバム『Love and Compromise』のために最初に書いた曲。アルバム2019年9月のリリースですが、書き下ろされたのは2018年の初頭だそうです。
この曲は、「自分が傷ついた話ではなく、自分が相手を傷つけてしまったときのことを書きたい」という思いから出来上がったのだそう。
「ある男性とのことがあったんだけど、そのことについて話したかったの。」Genius
マへリアがは去ろうとする側、ボーイフレンドが尋ねる側の関係性を描いた曲なのだそうです。
「私は自分が誰かを傷つけたときのことを話したことがないような気がしていたんだ。この曲のインスピレーションは、”なぜその人を恋しく思わないんだろう?”っていうところからきているんだと思うわ。」Genius
The Pharcydeの名曲「Drop」のビジュアルオマージュとも取れるミュージックビデオも見応えがあるので、是非ご覧ください。
3.Simmer (feat. Burna Boy)
リリース:2019年7月3日
収録作品:『Love and Compromise』
『Love and Compromise』からのシングルカット。ナイジェリアのヒップホップ・アーティスト、Burna Boy(バーナ・ボーイ)をフィーチャーした曲。ダンスホールにインスパイアされたサマーチューンです。
「プロデューサーと私は”Simmer”を聴いていて、この曲には他の誰かが参加したら素晴らしいサウンドになるだろうということに気づいたの。イギリスの3人を候補に挙げていたんだけど、プロデューサーが “Burna Boyに声をかけてみたら?”と言ったんだ。彼の才能とメロディには本当に驚かされたし、特にBurna Boyのようなアーティストと一緒に実験することは、とても価値のあることだと思ったわ。」billboard
Burna Boyには2回DMして返事が来なかったそうで、ついにはレーベルのマネージャーも頼ったのだとか。それほど喉から手が出るくらいの存在だったそうです。
4.Grateful
リリース:2019年4月26日
EP『Seasons』に続くリリース曲となった「Grateful」。スムースでしっとりとした質感のある一曲です。本人のTwitterでは1分間の生歌も公開されました。
Lost files🔍 This ones called ‘Grateful’ 🕊🕊 pic.twitter.com/eOF5iQqI5x
— mahalia (@mahalia) January 14, 2019
アルバムやEPには未収録のシングルリリース曲なので、見落としていた方は要チェックです。また、ライブパフォーマンスも素晴らしいので是非ご覧ください。
5.Sober (prod. by Maths Time Joy)
リリース:2017年7月7日
Youtubeの人気映像コンテンツ「A COLORS SHOW」でのパフォーマンスが、視聴回数5000万回を突破したマへリアの初期のメジャーヒット曲。それまでアコースティックな質感の強かったマへリアにとって、R&Bのフィーリングが色濃く出たヒット作品となりました。
この曲は、酔った勢いで元カレに電話をかけることについての歌で、この歌ができた時期はワイルドな私生活を送っていたのだとか。
「当時は、ダメな男に完全に恋をしていた時期でもあったわ。」VIBE
まさかこの曲が多くの共感を呼ぶとは思っていなかったようですが、逆に人間性を感じられたのか、結果的に大きな共感を獲得しました。
「これを書いていたとき、私は間違いなく”みんながこれに共感するだろう”とは思っていなかったわ。」BBC
「でも、私の曲の中で一番カバーされている曲だから、親近感が湧くんだと思う。」BBC
A COLORS SHOWのパフォーマンスは以下からどうぞ。
ex.Jacob Collier, Mahalia, Ty Dolla $ign – All I Need
リリース:2020年5月14日
収録作品:Jacob Collier『Djesse, Vol. 3』
Jacob Collier(ジェイコブ・コリアー)の4枚目のアルバム『Djesse, Vol.3』のサード・シングル。マヘリアとタイ・ダラー・サインををボーカルに起用した曲で、2021年のグラミー賞「ベストR&Bパフォーマンス」にノミネートされています。マへリアにとっては初のグラミー賞ノミネート作品となった曲でした。
この曲はパンデミック中に制作されたこともあり、マへリアは寝室からリモートで録音したのだそうです。
Mahalia(マへリア)の生い立ち
人種という壁に戸惑った少女時代
マへリアはロンドンから遠く離れたレスターという街で育ちました。母親はカリブ海の出身、父親はイギリス人。幼い頃は、白くもなく黒くもない肌の色に関して戸惑いを感じていたそうです。
「学校では3人の黒人のうちの1人で、そのことが私に大きな影響を与えたと思う。そのせいか、私はいつも小さな池の中の大きな魚のように感じていた。ほとんど白人しかいない学校の中で、アフロヘアーの少女である私は、ただただ違和感を感じていたわ。」VIBE
白人の子からは肌の黒い存在としてみられ、しかし環境の違う場所へ行くと「白人の女の子みたい」とも言われていたそうです。
「バーミンガムに引っ越してからは、いつも”白人の女の子”みたいだと言われたわ。だからとても戸惑ったけど、そのすべてが私を人間的に成長させてくれたの。」VIBE
違和感を感じた日々もあったものの、そのお陰で成長できことも事実で、レスターは今でも大好きな故郷なのだそうです。
作曲は11歳から始めた
母親も父親もシンガーという音楽一家に生まれたマへリアが、初めてミュージシャンになりたいと思ったのは6歳か7歳のときだそう。そして11歳で作曲の世界に足を踏み入れたそうです。
11歳のときに曲を書き始めて、その頃からギターも弾き始めたの。母も父もシンガーで、私に曲を書くように勧めてくれたんだ。VIBE
その後、レスターのいろいろな場所でパフォーマンスをするようになったそうです。2012年には最初のEP『Head Space』をリリース。マへリアの初期のスタイルを特徴づける曲が収録されています。
エド・シーランとの出会いにより、13歳でレーベル契約
2012年に歌手のエイミー・ワッジの紹介で、イギリスの有名アーティストであるエド・シーランと出会います。これがきっかけとなり、アトランティックレコードとの契約へ結びつきました。
「彼女が2012年にウルヴァーハンプトンで行われた彼のヘッドライン・ショーで私を紹介してくれたんだ。私は彼の大ファンだったから、とても真剣な話だったんだけど、彼女が “ねえ、エドに会いに来て” って言ってくれたの。私はすごく緊張していたんだけど、彼はすごく素敵な人で、私のことをツイートして “みんなこの子をチェックしに行こう” みたいな感じで、その数ヶ月後には文字通り契約していたのよ。彼が全てのことに影響を与えたんだ。その瞬間が始まりで、あとは歴史の通りよ。」NME
キャリアの初期には方向性に悩んだことも
契約後の2014年から2016年にかけては、バーミンガムのパフォーミング・アーツ・スクール(演技のための学校)にも入学し、試行錯誤していたそうです。
「音楽の勉強をしても、自分には意味がないんじゃないか、やりがいがないんじゃないか、と思っていたんだ。自分が何をしたいのか、本当にわかっていなかったんだと思う。ただ、試行錯誤していただけなの。」VIBE
キャリアの初期は、自分の音楽が受け入れられないプレッシャーと闘いながらも、自身の音楽を模索し続けました。
「業界は私のビジョンが完全に形成されるのを待っていたんだ。私は自分自身に忍耐強くなることを学ばなければならなかったのよ。」CLASH
その忍耐と努力は身を結び、みなさんの知る注目のアーティストとして現在に至ります。
影響を与えた音楽やアーティスト
自身の音楽を「サイコ・アコースティック・ソウル」と呼ぶ
マへリアは自身の音楽の定義を「サイコ・アコースティック・ソウル」と呼んでいます。「サイコ」「アコースティック」「ソウル」にそれぞれ意味があるそうです。
「”サイコ”というのは、”私の歌詞はちょっと変わっている”ということを言いたいの(笑)。”アコースティック”の部分は、自分の曲を演奏していることをみんなに知ってもらいたいという気持ちからきているんだけど、今は演奏することが少なくなってしまった。だから、”アコースティック”の部分は、生演奏のミュージシャンを取り入れるという意味だけで、それは必要不可欠なことなの。そして、”ソウル”という言葉は、自分がソウルフルであると思っているからだと思う。」billboard
影響・インスピレーションを受けたアーティスト
- Corinne Bailey Rae
- Jill Scott
- Lauryn Hill
- SZA
- India Arie
- Erykah Badu
- Amy Winehouse
- Adele
- Billie Holiday
- Gilbert Scott-Heron
- Palo!
- Talib Kweliなど
Jill Scottは毎日聴くほど好きなアーティストだそう。Lauryn Hillマへリアが成長する上で多大なインスピレーションを与えてくれたアーティストだそうです。
SZAに関しては音楽だけでなく、ファッション、メイク、雰囲気など、SZAのエッセンス全てが好きだそうで、マへリアのスタイルに大きな影響を与えたのだとか。
関連記事:SZA(シザ)とは / 情緒溢れるカジュアルなリリシストシンガー
デビュー・スタジオ・アルバム『Love and Compromise』を紹介
リリース:2019年9月6日
Atlantic Recordsからリリースされたデビュー・スタジオ・アルバム。ヒット曲「What You Did」でフィーチャーしたElla Mai(エラ・メイ)を始め、Burna Boy(バーナ・ボーイ)、Terrace Martin(テラス・マーティン)、Lucky Daye(ラッキー・デイ)などのアーティストがフィーチャーされています。
「Love and Compromise(愛と妥協)」と名付けられたこのアルバムは、アメリカの歌手/女優のEartha Kitt(アーサ・キット)があるインタビューで「愛と妥協」について話していたことに着想を得たアルバムです。作品はおよそ8年の歳月をかけて作られたのだとか。
愛についてはもとより、仕事、家族、友人など、愛にまつわるすべての妥協について書かれている作品です。
またサウンド面に関して、あるレビューでは「初期の作品を特徴付けたギターを奏でるスタイルと、エリカ・バドゥ調のネオソウル、さらにケンドリック・ラマーのコラボレーターSounwaveやDJ Dahiによって構築されたヒップホップが融合した作品だ」とも言われています。
ビルボードインタビューでも以下のように、収録楽曲の多様性について評価されていました。
“Square 1” のようなネオソウル系の曲から、Beenie ManをサンプリングしBurna Boyをフィーチャーした “Simmer” のようなダンスホールにインスパイアされた楽しい曲まで、あなたの音楽はとてもバラエティに富んでいますよね。billboard
マへリアは、「このアルバムを聴いて強い気持ち、素直な気持ちになって欲しい」と願っているそうです。
「このアルバムを聴いて、素直な気持ちになってもらえたらと思うわ。私が不誠実であるとか、そういうことを感じないで聞いてほしい。特に若い女性には、これを聴いて強い気持ちになってほしいですね。だから、 “I Wish I Missed My Ex” のような曲は、 “私はあなたがいなくても大丈夫、一人でも大丈夫” と言いたいから書いたのかもしれない。私の歌を歌うことで、悪い状況から抜け出せるようになればいいと思っているわ。」billboard
最後に
マへリアについて紹介しました。今回ご紹介していませんが、アルバム『Love and Compromise』リリース後も、いくつかリリースをしています。
2022年に突入してからもコンスタントにリリースが続いているので、そろそろ何かしらの新しいプロジェクトがリリースされるのでは?と期待が高まっています。
当ブログでも新曲の紹介をしているので、是非チェックしていただけたらと思います。
それでは今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。
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・ BAZAAR「R&B Singer Mahalia Wants to Create Excellence」
・billboard「Mahalia on Her Debut Album ‘Love & Compromise’, Writing Genre-Bending Love Songs and Nearly Quitting Music」
・VIBE「Mahalia Talks About Her Journey From Unknown Singer To Major Label Recording Artist」
・CLASH「Come My Way: Mahalia Interviewed」
・Genius「Mahalia」
・BBC「Mahalia: The singer drunk-dialling her way to fame」
・NME「Mahalia makes soulful R&B to burn pictures of your shitty ex to」
・BOA Academy