Sinead Harnett の「Stickin’」を考察&解説 / 良いことも悪いことも受け入れてそばに居る

イギリス出身のシンガーSinead Harnett(シニード・ハーネット)の「Stickin’」。 ナイジェリア系アメリカ人のR&BデュオVanJess(ヴァンジェス)と、ジャマイカのキングストン生まれバージニア州のニューポートニューズ育ちのシンガーMasego(マセーゴ)をフィーチャーした、ミドルテンポでスムースなトラックも心地よい一曲です。

今回はそんな「Stickin’」の歌詞の内容を主に、考察&解説していきます。(※本記事は筆者の感想文が含まれます。あくまで考察としてお読みいただければと思います。)

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Sinead Harnett – Stickin’ (feat. Masego & VanJess)はどんな曲?

「Stickin’」は、一番近しい人に対して感じる複雑な感情についての曲。「愛と挫折」「忍耐と疲れ」などについて歌われていますが、「それでもあなたのそばにいる」と、最後にはその人と一緒にいることの価値について歌われています。

曲自体は夏の雰囲気を持っていますが、歌詞はその雰囲気とは対照的な要素を出したかったのだとか。

「トラックを作成していた時、私は夏を感じていたんだ。歌詞ではそのイメージに少し対照的な要素を持ち込みたかった。」RATED R&B

「私たちの神経を一番逆なでするのは、私たちに一番近い関係にある人たちだったりすることがよくある。でも、結局はそういう人たちのそばにいつもいる。VanJessがその考えに自分たちの解釈を加えたことや、Masegoがその話に対する彼の意見を述べたことが、私は大好きだった。」RATED R&B

タイトルにもなっている「Stickin’」。「Stickin’ here with you(君のそばにいる)」というフレーズも頻繁に出てくる通り、何があっても最終的には「その人のそばに残ることを選び続ける」という意志が感じられます。

すなわち、根底には愛や信頼や親近感があって、「彼らを見捨てたり嫌いになるわけではない」ということを意味しているのではないかと思います。

Sinead Harnettの「Stickin’」のリリックを深読みする

ここからは歌詞のいくつかを抜粋して、曲に込められた想いを紐解いていきます。

Sinéad Harnett/Verse 1:異変に気づく歌い手

Lyric

I can see the signs
(私はその兆候が見える)
Somethin’ isn’t right, mm (Ain’t right, ain’t right)
(何かがおかしい(違う、違う))
So before you even try to tell a lie now
(だから嘘をつこうとする前に)
‘Member I know every side, each side of you, mm (Each side of you)
(君のすべての面、色々な側面を知ってることを忘れないで)

最初のヴァースは、歌い手が「何かが違うこと(何かが間違った方向にあること)」を予感している部分。

相手が嘘をつく前に「色々な側面を知ってる」と歌っている部分から、彼女が彼を深く理解していて、彼が何を隠そうとも彼女は真実を知っているという信念を示しているように思いました。

恐らく、いつものパターンのような感じで、口論や衝突が起きる予兆を感じ取っているのではないかと思います。

Sinéad Harnett & VanJess/Chorus:どんな状況でも「あなたのそばにいる」という事実と意志

Lyric

But you know I’ll still be here stickin’ with you (Oh)
(でも、君も知ってるよね、私はずっと君のそばにいるってことを)
I’ll still be here stickin’ with you (Oh-oh)
(私はずっとここにいて、君のそばにいる)
Whether you lift me up
(君が私を励ましてくれる時も)
Or whether you’re takin’ me down (Ah-ah)
(また私を傷つける時も)
Baby, I’ll still be here stickin’ with you, you (Ah-ah, yeah, yeah)
(私はずっと君のそばにいる)

ここでの主要なメッセージは「彼女が彼の側に残ることを選び続ける」ということで、この曲のハイライトとも言える部分。彼が彼女を支える時も、彼女を傷つける時も、いかなる時も彼女は彼のそばにいることを選ぶと、シンプルなメッセージで伝えています。

VanJess/Verse 2:困難な状況にも誠実に向きあいたいという気持ち

Lyric

Ready or not, we gonna talk
(準備ができていようといまいと、私たちは話すわ)
You got me on lock, but you gotta stop
(君は私を縛り付けているけど、それを止めるべきよ)
I get tired of playin’ games
(ゲームをするのに疲れてきた)
Ooh, but you been drivin’ me insane
(でも君は私を狂わせていたわ)
Yeah, it’s been obvious, the signs were apparent
(それは明らかだったし、兆しも見えていた)
But I stayed true ’cause I love you
(でも、私は君を愛しているから誠実であり続けた)
Ain’t no way that I’ma give up the fight
(戦いを諦めるつもりはないわ)
But ain’t no way that I’ma run a red light, yeah
(でも、私は警告サインを無視するつもりはない)

VANJESSのヴァースでは、恋愛関係の中で感じる葛藤や矛盾を抱えながら、愛の力とその複雑さを描写。相手に束縛されていると感じている一方で、その相手を愛しているために関係を継続していると歌います。

彼女たちは、その関係の中での遊びや曖昧なコミュニケーションに疲れたと感じていて、互いの関係の問題に直面していることを認識。しかし、「愛しているから」と、その問題に取り組む意志があることも明確にしています。

フラストレーションの中に「愛と忠誠心」を感じる部分です。

Masego/Verse 3:手綱を取り合い関係性を築く二人の物語

Lyric

It’s like, yes, I’m crazy, but I kinda gotta be
(そうだね、僕はちょっと狂ってるけど、そうでなきゃいけない気がするんだ)
You bring it outta me
(君が僕の中のその部分を引き出してる)
The louder me, the onomatopoeia, pop, boom
(もっと声高に、オノマトペ*1みたいに、ポップ、ブームってね)
Concrete jungle, where I be these days
(最近いる場所は、コンクリートのジャングルさ)
You swing my vine when you feel need to leave LA
(LAを離れたくなる時、君は僕の心を揺さぶるんだ)
Shawty, call me sticky tape
(ショーティ*2、僕を粘着テープって呼んで)
I call her kissin’ Kate
(僕は彼女のことをキッシン・ケイトって呼ぶんだ)
Oh, I’m the bad guy?
(ああ、僕が悪者なの?)
Oh, I’m the animal?
(ああ、僕が野獣なの?)
Hardly ever listenin’, ever listenin’
(ほとんど耳を傾けない、全く聞いてない)
I drive you crazy, you ride me manual
(僕は君をイライラさせる、君は僕を手綱を取って乗りこなす)

Masegoのヴァースでは、言葉遊びを散りばめながら、相手との複雑な感情や関係について触れています。彼は自分が少し狂っていると感じていて、彼女がそれを引き出していると表現。

彼は自分を「悪者」や「野獣」と表現し、自分がいい加減で、彼女をイライラさせることも多いことを自覚しています。それでも二人は「君は僕を手綱を取って乗りこなす」と表現するように、良い関係を築いているのではないかと感じました。

*1 onomatopoeia(オノマトペ)

音や状態などを言葉で表現した言葉で、日本語でいう「にゃー」や「わんわん」のような「擬音語」や「擬態語」といった言葉に相当するもの。

*2 Shawty(ショーティ)

「素敵な女性」「親しい女性」を表すスラング。ちなみにそこに続く「粘着テープ」は彼が彼女から離れがたい、または彼女を引きつけて放さないような存在であることを示唆しているのではないかと思われます。

(ちなみに彼女の愛称「キッシン・ケイト」に関しては、特定のリファレンスが見つけられなかったので、この記事の考察ではシンプルにニックネームとして解釈しています。)

Sinéad Harnett & VanJess/Outro:大切な人のそばに居ることを選ぶ

アウトロで、今一度「I’d still be here stickin’ with you(私はまだここにいて、君のそばにいる)」と歌っています。

最終的に「その人のそばに残ること」を選び続けているところから、パートナーのどんな側面に出会っても、「大切な人なら一緒に居ることに価値がある」こと伝えたいのかなと改めて感じました。

以上、Sinead Harnett – Stickin’ (feat. Masego & VanJess)の考察&解説でした。

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